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「ゆっゆ~♪」 「ゆ~♪」 れいむは巣の中で子ども達と一緒に宝物を眺めてにやにやと笑いあっていた。 「おや、なんだいそれは?」 「ゆ!?」 その時、突然巣の入り口から人間が覗き込んだ。 人間はゆっくり達の宝物を面白そうに眺めていた。 「あんなガラクタ大事にしてんのか…」 ゆっくりの宝物というのは比較的まるくて綺麗な小石や人間が出したゴミといったものだった。 こんなものでもゆっくりにとっては珍しく大事なのだ。 「ゆー!ここはれいむのおうちでこれはれいむのたからものだよ! ゆっくりでていってね!」 れいむは勝手に巣をのぞく男に対してぷんすかと怒り男はそれを無視して 顎に手を当てて考え込みながらぱっとひらめいたかのように自分のかばんの中を漁って 母れいむ二匹分くらいの箱を手渡した。 「宝物をそのまま置いておくなんて無用心だろ こっからこの中に入れるといいよ そうすれば取られない」 そう言って箱の上部の500円玉くらいの大きさの穴を指差した。 「ゆ!?おにいさんありがとう!ゆっくりもらっていくね!」 「ゆっくちありがちょう!」 男はゆっくり立ちに御礼を言われると笑顔で返して 箱を置いて去っていった。 「ゆ~♪これであんしんしてゆっくりできるよ☆」 れいむは嬉しそうに宝物の小石やゴミクズを口に咥えると箱の中にいれていった。 「おかーしゃんおかーしゃん!たかりゃものだけぢゃなくちぇごはんもだいぢだよ!」 「ゆ!ほんとだ!れいむのあかちゃんはやっぱりあたまがいいよ!」 子れいむにいわれてれいむは今度は食べ物を箱の中に入れていく。 食料を全て入れてれいむはほっと一息ついた。 「ゆ~こんどこそゆっくりできるよ…」 「う~~~~☆たーべちゃうぞー☆」 「ゆううううううう!?」 そんなれいむの巣に突如ゆっくりれみりゃが襲い掛かった。 「たーべちゃうぞー!」 「たちゅけておかあしゃああああああん!!!」 このままでは子れいむ達が真っ先にれみりゃに食べられてしまうだろう。 迫り来るれみりゃを見ながられいむははっと思いつく。 この大事なものを入れる箱の中に子ども達を入れれば子ども達は安全だ尾t。 「あかちゃんたちはこのはこのなかにはいってね!」 さっと子れいむ達を咥えると穴にぺっとだしてさらに上から押し込んだ。 「ゅぅぅぅぅぅう!?いちゃいよおかあしゃあああああん!!」 「がまんちてねえええええ!!」 穴が小さすぎたのか子れいむ達は痛みに悲鳴を上げるが今はそんなことを構っている暇は無い。 れいむは三匹の子れいむ達を即座に押し込んでいった。 「う、うー?」 れみりゃはさっきまでいた子れいむ達が箱の中に隠れてしまい困ったように辺りを探した。 「ゆううう!ここはぜったいにとおさないからゆっくりでていってね!」 立ちふさがるれいむを見てれみりゃはそれをむんずと掴んだ。 「これまずいからいりゃない!ぽいっするど!ぽいっ!」 「ゆうううううう!?」 「しゃくやー!ぷっでぃーんもっでぐるどー」 もとより子れいむ以外食べる気がなかったのか母れいむを投げ捨て、れみりゃはその場を立ち去った。 「ゆぅぅぅ…あぶないところだったよ…」 れいむはれみりゃに投げ飛ばされて痛む体を起こしながらほっと溜息をついた。 「ゆ、もうだいじょうぶだよ!ゆっくりでてきてね!」 「ゆー♪おかあしゃんしゅごーい!」 「さっしゅがぁ♪」 「おかあしゃんだいちゅき!」 子ゆっくりたちは歓声を上げて母の元へと行こうと箱の中を歩き回った。 「「「どうやってでりゅのおおおおおおお!?」」」 「ゆううううううううう!?」 それから一月が経った。 「ごはんをもってきたからゆっくりたべてね!」 巣に帰ったれいむは真っ先に箱の中に餌を入れていく。 「…むーしゃむーしゃ」 「…しあわ」 「じぇんじぇんしあわせじゃないよおおおおおおお!!!」 あれから子れいむ達は毎日のように泣いていた。 箱の中は穴以外から光は入らず非情に薄暗く、換気もろくに出来ないため常にじめじめとしていた。 鉄で出来た箱の内壁は冷たく重々しく、心までゾワゾワと冷ましていく。 箱の中はゆっくりとは全く無縁の場所だった。 「だちて!だちてえええええええ!!」 一匹の子れいむがドンドンと壁に体当たりを繰り返す。 「やめてね!ゆっくりできなくなっちゃうよ!」 「も゛う゛ゆ゛っぐり゛でき゛な゛い゛い゛い゛いいいい!!」 箱の中に子れいむの叫びが木霊した。 「ゆ゛ぐぐぐ…ごべんね…ごべんね…!」 れいむは箱に耳を当てて中の会話を聞きながらぎゅっと目をつぶり涙した。 もし自分が箱の中に入れたりしなければこんなことには もし自分がこの鉄の箱をひっくり返して中のものを取り出せれば れいむはこころの底から後悔した。 さらに二ヶ月の月日が経った。 都合、三ヶ月もの間子れいむ達は過ごしたことになる。 「ごはんをもってきたからゆっくりたべてね!」 「「「……」」」 ここのところもはや三匹は何も喋らずにただただご飯を食べるだけであった。 その姿を見ながら元気だった頃の子れいむ達の姿を思い出してれいむの頬を涙が伝った。 「どぼぢで…ごんなごどにぃぃぃぃ…」 悲痛なれいむの声を聞いて、通りすがりの男がすっと巣の中を覗き込んだ。 「なにしてんだ?」 あの箱をれいむたちに与えた男である。 「うわああああああああああ!!!」 思わずれいむは男の顔面にむかって体当たりした。 「うわっぷ!?な、なにすんだよ!?」 「おばえのぜいで!おばえのぜいでぇええええ!!」 「おにいざんがごのばごをわだずがらでいぶだぢがあああ!!!」 子れいむたちも男の出現を悟って思わず溜まっていたものが爆発して罵声を投げかけ始めた。 「な、まさかお前子どもまで箱の中に入れたのかよ!?」 男は酷く驚いたようだった。 「でいぶのあがぢゃんぢゃんどだぢでねえええええ!!」 男はこの箱ならゆっくりには取り出せないだろうと思って軽いいたずらのつもりでこの鉄の箱を手渡したのだが まさか子どもを入れてしまうなんて思いもよらなかった。 「わかったわかった、出してやるって…」 流石に男も気の毒に感じて手を貸してやることにしたのだった。 「あ、あぢがどおおおおおおおおおお!!!」 れいむは嬉し涙を流して男の足に頬をこすりつけて感謝した。 「要はひっくり返せばいいんだよ…重いな」 男はよっこいせと箱を持ち上げるとごろんとさかさまにした。 「ゆぐ!?」「ゆうう!?」「ゆっくりまわしぎゃあ!?」 中のものもごろごろ壁に当たりながら転がり、箱の穴が下側に向いた。 「さ、その穴からでな」 男は思っていたより重いのか少し声を震わせながら早く出るよう子れいむ達に促した。 「ゆっくりでてきてね!」 れいむはこれ以上ないという笑顔で子れいむ達の脱出を待った。 箱の中から子れいむ達が動きあう音がする。 「「「でれないよおおおおおおおおおお!!!」」」 「ど、どおいうことおおおおおおおお!?」 三ヶ月という時間は子れいむ達が成長するのに充分すぎたのだ。 500円玉程度の穴を通るには子れいむ達は成長しすぎていた。 「ぢゃんどだぢでね!でいぶのあがぢゃんぢゃんどだぢであげでね゛!」 「これ、加工場に働いてる兄貴から失敗作貰っただけだから加工場行かないと取り出すのは…」 「がごうじょういやあああああああああああ!!!」 子れいむ達が加工場という単語を聞いて泣き喚いた。 「ほがのぼう゛ぼうぢゃんどがんがえでよ゛おおお!!!」 子れいむ達が出られるという希望を打ち砕かれてれいむは半狂乱になって男に噛み付いた。 目は血走り、怒りに震えている。 「し、しるかよ!」 男は箱を投げ捨ててれいむを引っ剥がすと一目散に走り去った。 男にとっていくら同情したからといってこれ以上は面倒なだけだった。 「ゆぎゃあああああ!」 「いだいいいいい!!」 子れいむ達は箱を乱暴に投げ出されて壁に体を打ち付けて悲鳴を上げた。 「ま゛っでよおおおおお!ゆ゛っぐり゛だぢでえええええええ!」 れいむは男の後を追ったが遂にその男とふたたび出会うことは無かった。 「もういやあああああ!」 「ごごがらだぢでええええええ!!」 子れいむ達の悲鳴だけが箱の中から漏れ出していた。 それから月日は経って、子れいむ達が箱に入って一年がたった。 もはや親子の間で会話さえなくれいむが箱の中に餌を入れ それを黙々と子れいむ達が食べるだけという生活が続いていた。 成人間近の子れいむ達の食料を集めるためにれいむは奴隷のように働き続けた。 もはや他のゆっくりとの親交もなくただただひたすら食料を集めるだけ れいむの楽しみなど全く無くゆっくりせずに汗水たらす日々だった。 れいむはなみだも枯れ果てた目で箱を見つめる。 「ぉかあさん…」 その時、小さな小さなくぐもった声が箱の中から聞こえた。 「…!?どうしたの?ゆっくりしていってね!」 久々に聞いた子どもの声にれいむは慌てて箱をよじ登って穴を覗き込んだ。 「ぜまぃぃ…!」 「ゆ!ごべんね!いつかかならずだしてあげるからがまんしてね!」 れいむはいつも言っていた文句ながらも久々に子れいむと会話が出来て 嬉しそうに答えた。 「ちがうのぉぉお…!」 しかし子れいむの声は苦しみに満ち、切実だった。 「いぎ…でぎ…だい…」 「ぐるじぃぃ…!」 「ゆ!?どういうこと!?ゆっくりせつめいしてね!」 箱の中は限界に来ていた。 成長した子れいむ達により完全にぎゅうぎゅう詰めになり息をするのも困難なほどで 三匹は顔をつき合わせて穴に向かって口を開いていた。 もう後ろを振り返ることも出来ないだろう。 いや、横も無理か。 動かなくていいぶん発育だけは非常によかったのが仇になった。 ぶくぶくと太り成人以上のサイズになった三匹にもはやスペースは無かった。 次の日 何とかしなければと思いながらも結局何も思いつかなかったれいむは また食事を運ぶことを繰り返した。 「ぉか…さ…」 この前よりさらに苦しそうなか細い声が聞こえ、慌てて箱を覗き込む。 するとそこには赤黒い何かが広がっていた。 「ど、どおいうこと?!」 「はやくれいむのおくちにたべものいれてね!!!」 箱の中の赤黒い何かがうごめいたかと思うと子れいむの元気な声が返ってくる。 「ゆ!?ひょっとしてこれおくちなの? そんなところにいたらほかのみんながたべられないよ! ゆっくりどいてあげてね!」 「うるさいよ!むのうなおかあさんはゆっくりしてないではやくごはんよこしてね!」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおお!?」 子れいむの突然の暴言にれいむは驚愕した。 「こんなことになったのはおかあさんのせいなんだからおかあさんのいうことなんてきいてられないよ! おかあさんはれいむたちみんなしぬかれいむにだけでもごはんをあげるかとっととえらんでね!!」 「ゅ…」 「た…ぅぇて…お…ぁ…ん…」 子れいむの怒声と押し潰された他の二匹のか細い悲鳴が聞こえてくる。 「ゆ、ゆぅぅぅう…!」 れいむは悩んだすえに、他の二匹にないて謝りながら餌をあげることにした。 その顔には苦渋の色だけがあった。 それから三日ほど経った。 「……」 れいむは陰鬱な気持ちで箱の前へと歩いていった。 その姿はまるで死刑執行代への道を歩む死刑囚のように項垂れていた。 「おかあさん!はやくごはんちょうだいね!おなかすいてゆっくりできないよ!」 「ゆーおなかすいたああああああ!ゆっくりしてないでえええええええ!!」 しかし二匹の呼び声を聞いてその表情はぱぁ、っと明るくなった。 「ゆ!なかなおりしてくれたんだね!みんなでゆっくりごはんたべようね!」 れいむは三匹の子達が仲直りして押し潰すのをやめてくれたのだと想い喜びに震えながら穴を覗き込んだ。 「ゆ…?」 しかし穴の中からは甘い香りと真っ赤に開かれた二つの口があるだけだった。 甘い香りは一体どこから来たのかとれいむは目を皿の様にして必死に見回した。 何度か角度を変えると光の具合が変わり、その原因がわかった。 「どぼぢでええええええええ!?」 穴の前を占領していた子れいむが顎の下を食い破られて死んでいた。 「れいむたちのごはんをとるわるいれいむはやっつけたよ!」 「だからおかあさんはやくごはんちょうだいね!!!」 「ゆっぐりいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 れいむの中に一挙に恐怖の感情が沸き起こった。 自分の家族を自分で喰らったこの子達は本当に自分の仲間なのかという疑問がわきあがる。 その疑問や恐怖を仕方なかったんだと理性が必死に押さえつけた。 感情を押し殺して、れいむの箱の前にただ餌を運ぶだけの日々がまた始まった。 「ぐぢゃいいいいいいいいいいい!」 「むじじゃんごわいいいい!おがあじゃんだずげでよおおおおおお!!」 「……」 食いちぎられた子れいむの死体は腐って、悪臭を放ち いつの間に入り込んだのか虫たちが集り始めていた。 れいむの耳にはそんな状況に身をよじって助けを求める子れいむ達の悲鳴を 聞き入れる気力さえなかった。 ただただ餌を与えるだけである。 数日後、男が巣の中をのぞいた。 一瞬、箱を渡した男が来たのかと思ったがよく顔を見ると別人だった。 ひょっとしたら箱の開け方が分かって助けに来たのかと思ったのにぬか喜びだったのかと れいむはまた死んだ魚のような目で俯き溜息をついた。 「その箱、開けに来てやったぜ」 「「「ゆ゛!?」」」 「弟に前なんとかならないかって頼まれててな 工場の道具持ち出すと色々とまずいんだが弟があんまりに憐れそうに言うんで遂に折れてきちまったよ。」 その男は箱を渡した男の兄であるようだ。 罪悪感を感じてた弟が兄に頼み込んで、重い腰をあげたというところのようだ。 「あ、あぢがどおおおおおおおおおおお!!!」 れいむは押し殺していた感情が爆発して涙を流した。 この箱に囚われた生活がやっと終わるのだ。 「やっどでれるよおおおおおおおお!」 「おねえちゃん!おかあさん!おそとにでたらいっぱいあそぼうね!!」 子れいむ達は顔を見合わせて嬉し涙を流しながら笑いあった。 れいむもその仲のいい姿をもうすぐ見れるのだと思って嬉しくて嬉しくて仕方が無かった。 今までの全てが報われたとれいむは思った。 「加工場製作のチェーンソー、切れないものはあんまり無いぜ!」 男が背負っていた巨大な機械の紐を引っ張るとその刃が回転し始める。 その刃を箱に添えると火花と不思議な金属音が鳴って、箱の上部が切り開かれた。 「ゆぎゃあああああああああ!!!」 「でいぶどりぼんがあああああああああ!!!」 その際子れいむの頭の皮が少し削れ、悲鳴を上げた。 「あ、わるいわるい」 男は悪びれなくニヤリと笑った。 「きをつけてね!」 「わかったわかった、今だしてやるから…あ」 男は顔をしかめた。 「ゆ?どうしたの?はやくだしてあげてね!」 「「だしてね!」」 「ちょっと見てろ」 そう言うと男は死んだ子れいむの体を掴み引っ張った。 ベリベリと音を立てて壁に皮を残して子れいむの死体がちぎりとられた。 「ゆげええええええええ!!!」 凄惨な我が子の姿にれいむは餡子を吐いた。 「な、なんでごどずるのおおおおお!!」 そしてすぐに抗議をした。 男は残念そうに首を横に振る。 「皮が壁に完全に癒着しちまってるよ 取り出したら今みたいに皮剥がれて死ぬね 諦めろ」 男は両手を上げてお手上げのポーズをとった。 「どおいうごどおおおおおおおおおおおおお!?」 「ぢゃんどだぢでよおおおおおおおおおおお!!」 子れいむ達が話が違うと悲鳴を上げ男に飛び掛ろうとした。 しかし今は動ける空間があるにも関わらず一歩たりとも二匹は動くことが出来なかった。 「ま、人生そううまくいかないってこったな」 男はやれやれとチェーンソーを抱えて去っていった。 「「おいでがないでえええええ!!!ゆっぐりぢでいっでよおおおおおおお!!!」」 子れいむ達の叫びに男は一度だけ振り返って残念そうに眉をしかめたがそれだけだった。 「ふ、ふひひひひひひひいひひひ…ゆっくりぃ…ゆっくりぃ…」 れいむに至っては、絶望の淵で目の前にぶらさげられた希望を打ち砕かれて遂に心に異常をきたした。 しかしその顔は幸せそうでもあった。 なにせこうやって何もせずにゆっくりしているなど一年ぶりにもなるのだから。 子れいむ達も直に何もかも諦めてゆっくりしだして家族みんなでゆっくりできるようになるだろう。 このSSに感想を付ける
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ゆっくり昔話オープニング曲(1番) まりさ~良い子だ内臓(わた)だしな~♪ 今も昔もかわりなく~♪ 虐待お兄さん(おに)の情けの子守唄(レクイエム)~♪ 遠い~永遠亭(やしき)の~も~の~がた~~りぃ~いぃぃぃ♪ 雪ゆっくり むかしむかし、あるところに普通のお兄さんが住んでいました。 ある冬の日お兄さんは雪山で遭難しましたがゆっくりちるのに助けてもらい命拾いしました。 別れ際にゆっくりちるのはお兄さんに言いました。 「自分に遭ったことを誰かに話したら殺す」と。 翌年の冬。お兄さんが遭難した時と同じくらい寒い日でした。 お兄さんが家で暖をとっているとドンドンと戸を叩く音が聞こえてきました。 一体誰だろう?と思い戸を開けるとそこにはあの時のゆっくりちるのが立っていました。 「ちるのはたびのとちゅうぐうぜんたどりついたんだよ。みちにまよったからひとばんとめてね!」 実はちるのはお兄さんが自分のことを他人に喋ってないか監視するために旅人の振りをして近づいたのでした。 「君あの時のちるの?よくわからないけど泊まっていく?」 ちるのの変装は一発でばれてしまいましたが、お兄さんは昔の恩もありしばらくちるのを泊めることにしました。 しかし所詮ゆっくりと人間、まったく恋仲にはなりませんでした。 やがてお兄さんにも人間の恋人ができ、ちるのは段々邪魔者扱いされるようになりました。 夏の暑い日。とうとう痺れを切らしたお兄さんはちるのを家の外に投げ捨て中から鍵をかけました。 「ゆっくりいれてね!ちるのをすてないでね!」 ちるのが泣き叫びますが戸は開きません。 暑さに弱いちるのはやがて日射病にかかりそのまま死んでしまいました。 めでたしめでたし。 ちぇんとぱちゅりー むかしむかし、あるところにとても素早いゆっくりちぇんととても遅いゆっくりぽちゅりーがいました。 ある時ちぇんはぱちゅりーに言います。 「ぱちゅりーはどんそくなんだねーわかるよー」 怒ったぱちゅりーはちぇんに決闘を申し込みます。隣の山頂まで競争し、自分が勝ったら土下座して謝れ、と。 翌日。二匹は競争しますがぱちゅりーは素早いちぇんにどんどん引き離されていきます。 「どくそうたいせいなんだねーわかるよー」 半分ほど道を進んだところでちぇんは楽勝だと思ったのか居眠りしてしまいます。 「ぐおーすぴーふぐしゅー…い、いぎゃあああ!」 突然の激痛に目を覚ますちぇん、いつのまにか野生のれみりゃに頭からかじられていました。 「もぐもぐ…あまあまおいしいどー」 「い゛だい゛よ゛お゛お゛お゛お゛!ゆ゛っ゛ぐり゛や゛め゛でね゛え゛え゛え゛え゛!」 普段だったら素早く逃げるのですがれみゃに押さえつけられているので逃げることができません。 哀れちぇんはれみゃに食べられて死んでしまいました。 「ゼハッ!ゼハッ!も、もうすこしでさんちょうだよ…」 ぱちゅりーはゆっくりとした足取りながらも着実に進み、ついに山頂までたどり着きました。 「か、かったよ。ちぇんかった。これであんしんしてみらいにかえれるね…ぐほっ!おげええええ!」 普段運動をしていないぱちゅりーに山登りは過酷過ぎました。 山頂について安心したのか今までの疲れがどっとでてしまい、 咳き込んだ拍子に大量の餡子を吐いてしまい死んでしまいました。 めでたしめでたし。 醜いれいむの子 むかしむかし、あるところにゆっくりれいむの一家が住んでいました。 しかし両親がれいむ種にもかかわらず一匹だけ金髪のれいむが混じってました。 「そのかみのけげひんないろだね、このいんばいが!」 「りぼんのないきもちわるいれいむとなんかあそんであげないよ!」 「うわーん、にゃんでみんにゃいじめるのー」 金髪のれいむはみんなと姿が違ったため虐められていました。 ある日、偶然通りがかった旅ゆっくりぱちゅりーから自分はれいむ種ではなくありす種であることを教えてもらいます。 実は金髪のれいむ(ありす)は昔今の両親から拾われた子だったのです! ありすは本当の親を探すため旅に出ました。本来なら単行本10冊分くらいの長編なのですが短編集なので省略します。 つらい旅の末ありすはついに本当の親とめぐり逢います。本当の親はまりさ種のゆっくりでした。 「おきゃーしゃーん、あいちゃかったよー!ぐべっ!」 嬉しさのあまり母まりさに飛びつくありす。ですがあっさり吹き飛ばされてしまいます。 「ありすのこはしね!おまえなんかれいむのこじゃないぜ!」 ありがちな話ですが、ありすはまりさがレイパーありすにレイプされて生まれた子でした。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 何度も何度も母親に踏みつけられ、哀れありすは死んでしまいました。 めでたしめでたし。 ゆっくり太郎(山編) むかしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。 お婆さんが洗濯をしていると山の上からどんぶらこっこ、どんぶらこっことドスまりさの死骸が流れてきました。 まんじゅうじゃけえ食えるじゃろ、と思ったお婆さんはドスまりさの死骸を家に持ち帰りました。 お爺さんがドスまりさの死骸を包丁で切り開くとなかから子ゆっくりまりさが出てきました。 「ゆっ!おじいさんはかわいいまりさにたべものをよういするんだぜ!」 子供がいないお爺さん達は子まりさにゆっくり太郎という名をつけ飼うことにしました。 それからのまりさはペットとして怠惰な暮らしをしていましたが、ある日仲良しの野良れいむが死んでいるのを見かけます。 近くにいる野良ゆっくり達の話を聞くと3丁目のお兄さんに虐殺されたそうです。まりさの怒りが天を突きました。 まりさがお兄さん退治に行くというとお婆さんはピクニックかえ?と言いきび団子を持たせてくれました。さあ冒険のはじまりです! お兄さんのところへ向かっている途中。一匹の犬に出会いました。犬はまりさの持つ団子を物欲しそうな目で見つめています。 「いぬさん!だんごをたべさせてやるからおれのけらいになるんだぜ!いっしょうばしゃうまのようにはたらくんだぜ!」 犬はあっという間にまりさの団子をたいらげ、まだ足りないのかまりさの体をかじり始めました。 「いでででで!やめるんだぜ!おれはたべものじゃないんだぜ!」 その時、どこからともなく猿がやって来たかと思うと爪でまりさの目をえぐり食べてしまいました。 「う゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛ばり゛ざの゛づぶら゛な゛お゛め゛め゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 おこぼれに預かろうと空からカラスが飛んできてまりさの体をついばみます。 「や゛べでね゛!や゛べでね゛!ばり゛ざばお゛い゛じぐな゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛!」 哀れまりさは3匹に食べられ死んでしまいました。 まりさを食べて満足した3匹は家に帰ります。 「お、お帰り。今日は3匹そろってお帰りかい。」 待っていたのは虐殺お兄さん。実は3匹はお兄さんのペットだったのです。 今日も村は平和でした。 めでたしめでたし。 ゆっくり太郎(海編) むかしむかし、ある海岸近くでゆっくりにとりがほかのゆっくり達に虐められていました。 「みかけないゆっくりね。とかいはじゃなくてなんだかゆっくりできないわ」 「きもちわるいゆっくりはしぬんだぜ!」 「ゆっくりやめてね!ゆっくりやめてね!」 その時偶然ゆっくりれみゃが通りがかりました。ちぇんとぱちゅりーに出てきたれみりゃです。 「う~!た~べちゃうぞ~!」 「まりさはまずいからありすを…ぐぎゃあああ!」 「とかいはなわたしをたべようだなん…ひぎぃ!」 お腹が空いていたれみりゃはにとりを虐めていたゆっくり達を全て食べてしまいました。 自分のことを助けてもらったと勘違いしたにとりはれみりゃを竜宮城へと招待します。 「う~♪れみりゃはこ~まかんへいくど~♪」 れみりゃはにとりに乗って海へと潜ります。やがて竜宮城の前まで辿り着きました。 「もうすこしでりゅうぐうじょうだよ…ってうぎゃああああ!」 水に弱いれみりゃは溶けて死んでいました。腕だけが残ってにとりの体を掴んでいます。 「ゆっくりはなしてね!ゆっくりはなしてね!」 死体に掴まれているという恐怖からにとりはでたらめに暴れまわります。 やがて人食いザメの住む海域に紛れ込んでしまい、サメに食べられ死んでしまいました。 めでたしめでたし。 ゆっくりの恩返し むかしむかし、あるところに愛でお兄さんが住んでいました。 お兄さんが山を歩いていると罠にかかっているゆっくりみょんを見つけました。 「ちーんぽーちーんぽー…」 巨大な虎バサミに挟まれみょんは瀕死です。可愛そうに思ったお兄さんはみょんを罠から出してあげようとしました。 「ちーんぽ…みょぉぉぉぉぉ!」 みょんの体には罠が食い込み皮がズタズタに破れていましたが、皮肉にも罠に挟まれていたことにより餡子の流失が防がれていたのです。 罠が外れ体を圧迫するものがなくなったみょんは傷口から大量の餡子を噴出し死んでしまいました。 死んでしまったみょんは恩返しをすることができませんでした。 めでたしめでたし。 めいりん姫 むかしむかし、あるところにめいりん姫というたいそう綺麗なゆっくりがいました。 「…」 ん?どうしたんですかめいりんさん?浮かない顔して。 「…!」 どうせ自分も殺されるんだろうって?じゃあめいりんさんは死なずにハッピーエンドにしてあげますよ。 「~♪」 ある日めいりん姫は山で遭難している王子様を発見します。王子様は気絶していましたがとてもかっこいい人間でした。 王子に一目惚れしためいりん姫は気絶した王子様をふもとの山まで届けてあげました。 それからは王子様のことを思う日々。いてもたってもいられなくなっためいりん姫は魔女に相談しました。 「へっへっへ、おまえのこえをよこすんだぜ。そうすればかわりにどうたいをあげるんだぜ。」 めいりん姫は魔女と取引し胴体を手に入れました。これで王子様と結ばれることができる! めいりん姫はすぐに王子様のところに向かいました。 しかし運悪く途中で虐待お兄さんに捕まってしまいます。お兄さんはこう言いました。 「うわー胴体つきのゆっくりめいりんなんて珍しいな。これで一儲けできそうだ。」 お兄さんはめいりん姫を使って見世物小屋を開きました。お兄さんは檻の外からめいりん姫を虐めます。 夜にも珍しい胴体つきめいりんと虐待ショーにみんな大喜び! 虐待お兄さんは大儲けでとってもハッピーになりました。 めでたしめでたし。 おまけ 醜いれいむの子にでてきた旅ぱちゅりーとめいりん姫にでてきた魔女まりさがここにいました。 「ちょっとごつごうしゅぎすぎるわよ」 「ここはなにもなくてつまらないんだぜ」 二匹は今までの話の中で運良く不幸にならなかったゆっくり達です。しかしこれから人間に虐待されてしまいます。 「うそいわないでね、どこにもにんげんなんていないよ」 「まりさをいじめられるものならいじめてみろだぜー」 実は語り部は虐待お兄さんだったのです!お兄さんは素早く2匹を捕獲してしまいました。 「ゆべ!もうはなして!おうちかえるー!」 「ゆっくりやめてね!ゆっくりやめてね!」 「ヒャァ!虐待ダアアァ!」 過去作 ゆっくり転生(fuku3037.txt~fuku3039.txt) ゆっくりくえすと(fuku3068.txt) ともだち(修正)(fuku3103.txt) ANCO MAX(fuku3178.txt~fuku3179.txt) 利口なゆっくりと賢いゆっくり(fuku3386.txt) このSSに感想を付ける
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竹取り男とゆっくり 8 *登場人物 男・・・主人公。竹切って売って生活してる人。餡子好き。 甘味屋の店主・・・ゆっくり饅頭を売ってる人。虐待好き。 ゆっくり・・・ヒロイン(笑) *あらすじ 無類の餡子好きの竹取り男は、ゆっくり饅頭を食べた瞬間にすっかりハマってしまう。 甘味屋でぱちゅりーとれいむの入った「繁殖セット」を買って赤ぱちぇと赤れいむの繁殖に成功したのだが、 なりゆきで「子供は食べない」と約束してしまったことから、男は饅頭が食べられずに悶々とした毎日を送っていた。 そんな秋の終わり、たくさんの野良ゆっくりが竹取り山に引っ越してきて冬籠りをはじめる。 やつらの狙いは春先のタケノコ。 男は副収入源であるタケノコを守るため頻繁にゆっくり狩りに行くことになったが、素敵な饅頭ライフも手に入れてそれなりに幸福だった。 空も澄みわたり、季節は早春。 野山にはわずかに雪が残っているものの、ここ幻想郷の竹取り山にも、ひとしく春の風が舞いきたる。 つまり、やつらが目覚めるのだ…。 ボコッ 竹に覆われた地面に、小さな丸い穴が開く。 その中からヒョッコリと顔を出したのは、ゆっくりまりさ。 まりさはキョロキョロとあたりを見回すと、元気よく巣を飛び出した。 「ゆっくりー!!」 続いて、つがいのれいむも「ゆっくりー!!」と飛び出した。 「ゆっくりー! ゆっくりしていってね!」 「ゆーっ! ゆっくりしていってね!」 2匹は、餡子がたっぷりと詰まった体を伸ばしたり縮めたりしながら、あったかい目で景色を見ている。 冬の終わりがよほど嬉しいらしく、しばらく野山の竹にまで「ゆっくりしていってね!」と声をかけていた。 それから頬を擦りあわせたり髪をぺろぺろして仲良く過ごしていたところ、だんだんおなかが空いてきた。 「れいむ! たけのこさんをさがしにいこうね!」 「ゆゆっ! そうだね!」 まりさとれいむは「ゆっゆっ!」と鳴きながら山道を跳ねていった。 「ゆっゆっ」 「ゆっ! ゆゆ!」 「まりさ、たけのこさんってどんなの?」 「ながくてまるくてとんがってるんだよ!」 「ゆ? へんなかたちだね!」 「でも、おいしくてゆっくりできるんだって!」 「ゆゆ! ぐるめなれいむにおいしいたけのこさんをたべさせてね!」 「ゆっ! ゆっくりまかせてね!」 2匹は楽しく会話をしながら、ゆっくりとタケノコを探した。 あまりにゆっくりしすぎて夕方になった。 「ゆぅ……れいむ、さむくてゆっくりできないね」 「そんなことよりたけのこさんだよ!」 午後から急に寒さが戻り、太陽は厚い雲にさえぎられて薄暗い。 今までの暖かさは春の訪れなどではなく、単なる小春日和だったようである。 ふつうの動物ならあわてて巣に帰るところだが、2匹はタケノコ探しをやめなかった。 食い意地ばかり優先して、寒さが戻ったらどうなるかなど考えもしなかった。 「どおしてみつからないのおおおおおおおおおっ!!!??」 数時間後、まりさは森の中で絶叫した。 この季節、ほとんどのタケノコは土の中だということを、まりさは知らなかった。 「まりさはつかれたよ! ここでゆっくりしようね!」 「ゆっゆっ! そうだね! ゆっくりしていこうね!」 そうしてゆっくりと休憩するあいだに、全裸にひとしい体には寒風が突き刺さる。 こうなってはタケノコ探しどころではなく、2匹のゆっくりは「ぷるぷる~!」と震えながら密着して暖め合っていた。 そして、ついに夜がきた。 「ゆ゙ゔゔゔゔっ!! さむいいいいいいっ!! ゆっぐりできないいいいいいいいっ!!」 「ばじざああああ!! さむいよおおおおおおおおお!!」 いい加減に諦めておうちに帰ればよいものを、2匹はいつまでもその場で震えていた。 この期におよんでもタケノコへの欲求が止められず、この寒さがやわらいだらまた探しに行こうなどと考えていた。 「かぜさんもっどゆっぐりじでねえええええ!!」 「でいぶをゆっぐじざぜでねえええええ!!」 ビュゴオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!! 「「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!!」」 そうして暗い森の真ん中で、まりさとれいむはいつまでも暖かくなるのを待っていた。 翌日…。 小雪のチラつく朝、2匹は両目を限界までヒン剥いて、凄まじい表情でカチンコチンに凍っていた。 意識を失う直前まで痙攣していたのだろう……その表情はあまりにも壮絶だった。 …まりさは口をあんぐりと開けて。 …れいむは歯を食いしばって。 まるで阿形と吽形のように、2匹のゆっくりはあたりに威風をはらいながら仲良く凍っていた。 * * * その日、竹取り山の竹取り男は、大きな籠を背負って家を出た。 「う~、寒い!」 今日は、この山に移住してきたタケノコ狙いのゆっくりを駆除しに行く日だ。 朝霧のたゆたう中、深い竹の森に入ってゆくと、ほどなくしてお目当てのものが見つかった。 「あったあった。おい、ゆっくりしてるか?」 ……返事はない。 それは、例の阿形まりさと吽形れいむだった。 カチコチの冷凍饅頭となった2匹を手にとった男は、その顔があまりにも凄惨すぎて噴き出してしまった。 食べ物というより、屋根に乗せて鬼瓦にできそうだ。 まぁ顔はマズいが、中の餡子はすっかり甘くなってるだろう。 2匹を背中の籠に放り投げると、中でぶつかって「カッチーン!」と良い音がした。 「おぅ、今日は大量だな」 昨日が春だと勘違いしたゆっくりは2匹だけではなかった。 竹取り山のあちらこちらに、醜く顔のゆがんだ冷凍ゆっくりが転がっていた。 …冬の間は、ごく稀に暖かい日がある。 すると、ゆっくりの中には春が来たと勘違いするものがいる。 一度春だと信じて巣を飛び出したゆっくりは、たとえ寒さがぶり返そうとも、なかなか冬籠りに戻ろうとしない。 長いあいだ我慢してやっと解放されたと思ったのに、またゆっくりできない冬籠りに戻るのは嫌なのだろうか…。 それとも、春のちょっと寒い日という程度に考えているのだろうか…。 とにかく、小春日和の翌朝は、こうして凍りついたゆっくりが苦悶の表情で転がっているのが常だった。 「赤ゆ見っけ」 つがいのありすとまりさの間に、6匹のプチトマトサイズの赤ゆっくりを見つけた。 男はその中から1匹の赤まりさをつまんで口に入れると、コロコロと転がして溶かしていった。 「ゅ……ゅ……ゆっくち?」 シャリッ! 「ゆぴぃっ」 解凍されて意識を取りもどした赤れいむを歯ですり潰すと、口に広がるのはシャーベットの食感。 水気の多い赤ゆっくりならではの食感だ。 そして、一晩中寒さに苦しんだことで増した芳醇な甘み。 う~ん、うまい…! 男は残り5匹の赤ゆっくりを順番に堪能しながら、冷凍ゆっくりを次々に捕獲してゆく。 すると、瓢箪のような体型をしたれいむに出くわした。 おなかのあたりを撫でてみると、案の定、胎生にんっしんっしている様子。 このれいむで、ちょうど籠がいっぱいになった。 帰宅すると、子ぱちぇと子れいむを寝かしつけていた母ぱちゅりーが、神妙な面持ちで居間から出てきた。 男は籠をサッと背後に隠すと、「ただいま」と言った。 ぱちゅりーはいつもどおり、「むきゅ、おかえりなさい」と言う。 男がそそくさと台所に向かおうとすると、ぱちゅりーが声をかけてきた。 「おにいさん…また"あれ"をたべるのね?」 ウチの子ゆっくりの情操教育によくないということで、ぱちゅりーの提案で、男が食べるゆっくりは"あれ"という言葉に置き換えている。 「…なんだよ。俺の趣味を邪魔するのかよ」 「むきゅ、ちがうわ。でもおにいさんが"あれ"をたべているところを、もしもこどもたちがみたら…」 「なんだようるせぇな! だからこうやって、台所でコソコソ寂しく食ってるんじゃねぇか! ここは俺のおうちですよ!?」 …て言うかなんなんだ、この難しい年頃の子供を持った夫婦がするような会話は! 「くそっ、なんだってこんな苦労しなきゃいけねぇんだよ! 俺はただ饅頭が食いたいだけだっつーの!」 男がブツクサ言いながら台所の戸を閉めると、ぱちゅりーは悲しそうな顔でむきゅむきゅと居間に戻っていった。 「さぁて、おやつの時間だぜ」 街で買ったカキ氷製造機を用意して、どのゆっくりから食べようか見定めていた時である。 ぱちゅりーがれいむを連れて、戸を開けてむきゅむきゅと入ってきた。 …器用になったもんだ。 「むきゅ! おにいさん、おなかがすいてるならおやさいをたべるといいわ!」 「ゆゆ! いっしょにたべようね!」 そう言って白菜を引きずってきた。 この2匹は、前々から男のゆっくり饅頭食いをやめさせようと画策していた。 子ゆっくりの教育によくないし、なにより同族を食べられているのだから…。 「あのなぁ…俺は今、饅頭が食べたいんだよ」 「むぎゅ? おやさいのほうがゆっくりできるわよ!」 「ほら、とってもおいしいよ! むーしゃむーしゃ!」 2匹はさも美味しそうに、白菜の葉っぱを千切ってむしゃむしゃと食べて見せた。 「あぁそーかい。じゃあ俺は忙しいから、ゆっくりさよーなら!」 「む、むきゅ!? おにいさん、おやさいを…!」 「もっとゆっくりしていってよー!」 2匹を白菜ごと家の外に放り投げると、男は台所に戻った。 時間が経ったせいで、籠の上のほうのゆっくりがほんの少し解凍されていた。 「ゆ…ゆ…おじさんだれ…? ゆっくりできるひと…?」 皮のふやけた成体のゆっくりれいむが、うっすらと目を開けて尋ねてきた。 男は無言でれいむを持ちあげると、カキ氷製造機の台に乗せて、上からプレスしてれいむを固定した。 「ゆっ……いたいよ……ゆっくりやめてね……」 キュルキュルキュルキュルキュルキュル!! 「ゆぐゔゔゔゔゔゔゔゔっ!!!??」 ハンドルを回すと、固定されたれいむがクルクルと回転する。 すると、台に備えつけられた鋭いカッターが回転するれいむの底部を薄く薄く削りはじめた。 やわらかい音とともに、台の下かられいむのあんよの皮が出てくる。 そして… ガリガリガリガリガリガリッ!! 「ゆぎえあぁ!? ゆぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!」 まだ凍っているれいむの餡子が削られて、お待ちかねのカキ氷が出てきた。 「だっ…だずげでぇ!!! いだいよぉ!!! おめめがまわるよぉ!!! ゆっぐりでぎないいいいいい!!!」 コミカルに回るれいむが必死に命乞いをしているうちに、皿の上には黒真珠のような光沢を放つフワフワのカキ氷がこんもりと盛られた。 「ゆ゙っ……ゆ゙っ……もっとゆっくりしたかった……」 そう言って白目を剥いているれいむをよそに、男はカキ氷をひと口食べてみた。 「おふう……っ!!」 …美味しいものは、最初のひと口がもっともヤバい。 やわらかな口溶けの後、しっとりとした上品な甘みが広がってゆく。 身も心もとろけるようなまろやかさに、クラッ…と眩暈をもよおした男は壁にもたれかかった。 一瞬、死んだはずの両親が遠くで手を振っているのを見たような気がした。 「あ、危なかった…もう少しでトリップするところだったぜ…」 この一品、ただのカキ氷に餡子をかけたような手抜き品ではない。 一晩中寒波に苦しみつづけ、あげく冷凍状態となったゆっくりそのものを直に削った絶品だ。 時として大自然の加工の力は、人間の調理技術など軽く凌駕するのである。 …それはさておき、男はカキ氷を平らげては削り平らげては削って、れいむはとうとう髪だけになって機械のまわりに散った。 「ごちそうさまでした」 丁寧に両手を合わせると、男は次の冷凍ゆっくりを籠から取り出した。 今度は、金髪に黒いとんがり帽子のコントラストが印象的な、成体のゆっくりまりさ。 男は帽子だけ奪って捨てると、まりさを台に乗せてプレスで固定した。 「ゆふん……まりさ……もぅたべられないよ……ゅ……」 キュルキュルキュルガリガリガリガリガリッ!! 「ゆんぎゃばあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!!???」 古典的な寝言をほざいて眠りこけていたまりさは、あんよを削りとられ、中身の餡子を粉砕される激痛にカッと両目を開いた。 「ゆっ! ばでぃざのごばんばどごっ!? ゆぐゔゔゔ!!! どぼぢでごんなごどになっでるのおおお!!!?? …ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!!」 目覚めた瞬間、夢の世界で食べていた美味しいご飯を探しだすまりさ。 だが、想像を絶するような痛みで現実に引き戻され、おかれた境遇に疑問を投げかけた次の瞬間、すでにまりさは目の下まで失って痙攣していた。 なんとも目まぐるしい最期だった。 まりさの短かったゆん生と引きかえに、皿の上には、一見すると先ほどのれいむと同じような黒く輝くカキ氷。 だが…… 「いただくぜ」 パクッ 「んぐゔゔゔ……っ!!」 違う、違うのだ。 まりさの粒餡カキ氷……それはれいむの上品なこし餡カキ氷にくらべて、より荒々しく、素材の持つ独特の風味をそのままお伝えしてくる。 どっちも甲乙つけがたい味だ。 「ごちそうさまでした…」 男はペラペラになったまりさの皮に両手を合わせると、3匹目の冷凍ゆっくりを機械にセットした。 ……まだ食うんか! とツッコミが入りそうだが、この男の餡子好きは天井知らずなのだ。 そうしてしばらく「ゆっくりカキ氷」を堪能していた男は、今度は違うメニューを楽しむことにした。 次に手に取った冷凍ゆっくり…それは最後に見つけた瓢箪のような形の胎生にんっしんっれいむだった。 まだ意識を取りもどしていないそのれいむを、水をはった大きな鍋に入れて火にかける。 やがて水は湯となり、解凍されたれいむが目を覚ました。 「……ゆっ? ここはどこ?」 「俺の家だ」 「おじさんだれ?」 「山でくたばってたお前を助けた優しいお兄さんだよ」 「ゆゆ! やさしいおにいさんはれいむのおうちでゆっくりしていってね!」 …だから俺の家だってのに! おうち宣言をするまでもなく、すでに自分のおうちと決めているれいむだった。 「ゆ? ゆ? ゆ?」 れいむは周囲をキョロキョロと見回すと、自分がお湯に入っていることに気づいた。 「ゆっ! あったかいね!」 「湯ッ! お風呂っていうんだぜ、気持ちいいだろ」 「ゆゆ~ん♪ ここをれいむのゆっくりぽいんとにするよ!」 「そうだな、そこはお前専用だ」 「ゆゆ! ものわかりのいいおにいさんだね! れいむはかんしんしたよ!」 「そいつはどぅも。背中流してやるよ。 …頭しかないがな!」 すでに上から目線のれいむだが、男はさして気にもせず、おタマでれいむの後頭部に湯をかけてやった。 「ゆふーっ! ゆっくりぃ…………ゆ~ゆゆゆ~ゆゆ~~♪」 生まれて初めてのお風呂の気持ちよさに、れいむは音痴な歌まで歌いはじめた。 「ところでお前、腹の子供はどうだ?」 「ゆゆ~…ゆ? もうすぐうまれそうだよ! おにいさんにはとくべつにれいむのかわいいあかちゃんをみせてあげてもいいよ!」 「そうか…楽しみだな」 鍋風呂でふんぞり返って、すこぶるご機嫌なれいむ。 「このおみずさんをあかちゃんの"うぶゆ"にするよ!」とか言いながら、喉の奥をこれでもかと見せつけながら歌っている。 「ゆ…おにいさん、おみずさんがあつくてゆっくりできなくなったよ! なんとかしてね!」 「そろそろかな?」 「ゆゆ? なにいってるの? れいむのいうことがきこえないの? ゆっくりしないでさっさとおみずさんを……ゆ゙ん゙っ!?」 すると、長いあいだ湯につかって完全解凍されたれいむの中の赤ゆっくりが、水圧で窮屈になった母体から抜け出そうと暴れはじめた。 「ゆ゙!? ゆ゙っぎい!! いだいっ!! いだいよおぉぉぉ!!」 中身の餡子を引っ掻き回すような赤ゆっくりの動きで、強制的に産気づくことになったれいむ。 「おい、あんまり暴れると子供が潰れるぞ?」 「ゆぐっ!? やべでね!! きたないてでれいむにさわらないでね!!」 「…あぁそうかい」 れいむは歯を食いしばりながら、全身ヌメヌメした餡子汗にまみれて息ばっていた。 次の瞬間、ボッ…と音が聞こえそうな勢いで産道が開いて、透明な湯に茶色い餡子汁が噴き出した。 「でいぶのあがぢゃん!!! もっどっゆっぐじうばれでねええええええ!!!!」 そんなれいむの言葉に反してますます暴れる赤ゆっくり。 赤ゆっくりがいつまでも飛び出してこないのは、産道から流れこんできた熱い湯に驚いて反対側に逃げようとしているためだ。 だが、狭いおなかの中に逃げる場所などあるはずもない。 熱い湯に襲われた赤ゆっくりは、半狂乱になってれいむの餡子をこねくりまわした。 「おにいざんはなにじでるのおおお!!? でいぶがくるじんでるんだがら、ざっざどだずげなぎゃだめでじょおおおおお!!!!???」 「お前さっき汚い手で触るなって言ったろ。俺はゆっくり見てるから早く産めよ」 「ごのぐぞじじいいい!!! でいぶをだずげろおおおおおおお!!!! ぞれがらゆっぐりじねえ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!!!!」 男がそっぽを向くと、無視されたことに怒り狂ったれいむは真っ赤な茹で饅頭のようになって湯気を噴いた。 だが、すぐにまた苦しみ出した。 「ゆ゙ごお゙お゙お゙っ!!!! ぐぐぐぐっ…ゆがっぐっ…ぐ…………ゆっ!?」 すると、あれほど暴れていた赤ゆっくりがピタリと静かになり、れいむのおなかの痛みも引き潮のように去っていった。 「ゆふぅぅ…」 れいむは安堵して笑顔を見せる。 「れいむのあかちゃん、やっとゆっくりしてくれたんだね? ききわけのいいあかちゃんだね!」 そう言うと、赤ちゃんを産むためにゆっくりとおなかに力を入れた。 「ゆんっ」 トロリ…… ……れいむの産道からなんの抵抗もなく流れてきたもの。 それは、こげ茶色の餡子汁と、小さなデスマスク、そしてミニサイズの赤いリボンだった。 「ゆわ…ぁ………ゆわあああ………ゆわああ…………」 外の世界を見ることもなく、お母さんれいむにごあいさつすることもなく、赤れいむは産道を出る前にそのゆん生を終えていた。 グツグツグツ… いよいよ鍋の湯が煮立ってきたが、死産のショックから立ち直れないれいむは、赤ちゃんの餡子で茶色く染まった湯を呆然と見下ろしていた。 「どぼじて……? れいむのあがぢゃんどぼじて……? うぶゆまでよういしてあげたのに……どぼぢで…………?」 …用意したのはお前じゃないだろ、というツッコミはさておき。 絶望して餡子脳が停止している間に、閉じる意思を失ったれいむの産道へ熱湯が流れこんでゆく。 そうして内から外から溶かされていったれいむは、まもなく致死量の餡子を流し尽くして赤ちゃんの後を追った。 れいむがあの世で赤ちゃんとゆっくりできたかは永遠の謎である。 …さて、れいむ親子の最初で最後のお風呂となった鍋の中では、立派なお汁粉がホコホコと湯気を立てていた。 「カキ氷ばっかだと腹壊すからな…」 おタマで鍋をかき混ぜながら、男はカキ氷に使った数匹のゆっくりの目玉をまとめて入れた。 寒天質でできたゆっくりの目玉は、単体で口に入れてもただの寒天。 だがお汁粉に入れれば具材となって味も引き立つ。 …あんみつに入った寒天を想像すれば分かってもらえると思う。 美味を約束する香りが、男の鼻腔に吸いこまれてゆく。 男はおタマでお汁粉をすくうと、「いただきます」も忘れて口に入れた。 「あっはぁ……!!」 津波のように押しよせる、甘美な誘惑…。 男の脳細胞が一斉に活性化して、これまで食べてきたゆっくり饅頭たちが虹の向こうで微笑んでいるのが見えた。 「あ゙…?」 夢の世界から帰ってきた男は、涎をぬぐって頭を振った。 「あぶねぇ…また妙なものを見た気がするぜ…」 男はふたたびお汁粉を口に運び、まもなく鍋はカラになった。 最近はこうして冷凍饅頭を拾いに行っては、カキ氷やお汁粉、また羊羹などに加工して楽しんでいた。 そのまま食べてもいいが、ちょっと手を加えるだけでまた違った味わいを楽しめる。 ゆっくり饅頭は奥が深い…。 そうしておよそ10匹前後のゆっくりを完食した男は、腹をパンパンに膨らませて、余りの入った籠を持って地下室に下りた。 吐息も白くにごる地下室には、大きな麻袋が3つ壁にかけてあり、それぞれ『れいむ』『まりさ』『ありす』と記されていた。 こうして種類ごとに分別しておいて、その日の気分で食べ分けるのだ。 れいむとまりさは個体数が多いだけにすぐ補充できるが、男の餡子好きのせいで消費もまた早い。 膨らんだありすの袋を見て、そろそろ甘味屋に売りに行くことにした。 つづく ~あとがき~ 道端でゆっくりが凍ってたら、 私ならきっと拾っちゃいます!(笑) 読んでくれてホントにありがとう! また次回でね♪ ~書いたもの~ 竹取り男とゆっくり1~8(執筆中) 暇なお姉さんとゆっくり せつゆんとぺにこぷたー 悲劇がとまらない! あるゆっくり一家のひな祭り
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俺は虐待お兄さん。唐突だが、現在老人ホームで働いている。 何故老人ホームかって?親父がそこの院長をやってるのさ。 俺ももういい年だが、職にも就かずにフラフラしていたところ、親父にこっぴどく怒鳴られて手伝いをさせられるってワケだ。 正直この仕事はつまらん。毎日毎日老人達の相手。何人かはボケが入っている。 ああ、つまらん。しかし、ここで投げ出したら今度こそ親父は俺を勘当するだろう。 それは困る。小遣いもらえなくなるからな!!仕方なく、老人達の話し相手になってやっているのだ。 あーはいはい、タケさんその話は四回目だよ。 そんな状況にも楽しみはある。実は、ゆっくりセラピーというものがこの院で行われている。 孤独な老人達を慰めようというアニマルセラピー。その動物の役をゆっくりにやらせるのだ。 ゆっくり饅頭と緩慢な動きの老人。これほど相性が良いものがあるだろうか。 しかも、ゆっくりの餡子脳では長い話は対して覚えられない。同じ話を何度も繰り返す老人、その話が十数回目だということにも気づかないゆっくり。 老人はゆっくり達に癒しを求め、可愛がる。ゆっくり達は老人に可愛がられてゆっくりする。平和な光景だ。 ところで一度に三十匹程度運ばれて来るゆっくり達。彼女達は一ケ月もするといなくなってしまう。当然、俺が虐待してしまうからだ。 行方不明になるゆっくりも数が多いが、馬鹿な饅頭のことだ。外に出た拍子にゆっくりゃに食われでもしているのだろう。 一度親父に随分ゆっくりがいなくなるのが早い、といわれたが、饅頭だし年寄りに食われたんだろ、と言い返すと納得したようだ。 今は物陰にゆっくりを引きずり込んでは虐待する日々を送っている。 今日も三十匹程度のゆっくり達が院にやってきた。 運搬しやすいよう冷却され、仮死状態になっているゆっくり達を、庭の日のあたる場所に並べて待つこと三十分。次々にゆっくり達が目を覚ます。 「ゆ!ここはどこ!?」 「すごくゆっくりできそうなばしょだよ!」 「いまからここをれいむたちのおうちにするよ!」 「しゅるよ!」 目覚めた途端にお家宣言。いつもの事だ。まあ、今回は潰さないでやる、あながち間違ってもいないんだし。 全ての饅頭が動き出したのを確認してから、俺はゆっくり達に近寄った。 「ゆ!おにいさん、ここはれいむたちのおうちだよ!」 「ゆっくりしないではやくでていってね!」 「ゆっきゅりでていっちぇね!!」 「ああ、勿論だとも。ここは君達のお家だよ!実は、とてもゆっくりした人たちが君達と一緒に暮らしたがっているんだ!」 「ゆ、にんげん!?」 「だめだよ!にんげんはゆっくりできないよ!」 「大丈夫!いざとなったられいむやまりさでもやっつけられるような弱い人間だよ!でも、その人たちは君達が大好きなんだ!お菓子もくれるよ!」 「ゆゆっ、おかし!?」 「まりさたちおなかすいたよ!ゆっくりしないでおかしをちょうだいね!!」 「ゆっきゅりちょーだい!」 「じゃあ、君達をあんないするよ!ゆっくりついて来てね!」 ホームの居間に入ると、「ゆっくりしていってね!」の垂れ幕とともに老人達がゆっくり共を出迎える。 「おお、可愛いれいむじゃのお!」 「ゆ、すごくゆっくりしたひとたちだね!とくべつにれいむたちのおうちにいれてあげてもいいよ!」 「まりさや、こっちにおいで!お菓子をあげよう!」 「ゆゆ!おかし、おかし!はやくちょうだい!」 「あらまあ、可愛い赤ちゃんねえ。」 「あたりまえだよ!れいむたちのあかちゃんがかわいくないわけないよ!」 「ゆっきゅりー!!」 初対面は上々のようだ。ゆっくりたちはお菓子に飛びついたり、じいさんばあさんの膝に乗って頭をなでられたり、施設の中を探検に出たりと様々な行動に出る。 ……さて。 四匹で列を作って廊下を跳ねていく、探検に出た子まりさ達。 その最後尾の一匹を鷲掴みにし廊下の陰に隠れる。もちろん、攫ったゆっくりは声を出せないよう口を手で押さえる。 「ゆっ!?まりさがいないよ!?」 「まりさー!どこいったのー?」 「ゆっくりしないででてきてね!!」 「…ゆ!みんなでまりさをさがすよ!!」 「「さがすよ!!」」 そんな声が聞こえる中、俺は子まりさの口を塞ぎながら話しかける。 「おや、他の三匹が君の事を探してくれてるよ?」 「ひょっとして、あの子達は君のお姉さんかな?」 「そうだ!君が死ぬまでにあの三匹が君を見つけてくれたら、生かして帰してあげるね!」 もちろん右手で口を塞ぎ、開いた左手では虐待だ。少しずつ頬をむしりとり、目を潰す。 そうしている間にも手の中のまりさは悲鳴を上げようとするが、そうさせないために口を押さえているのだ。 底部の皮がボコボコと膨れているのは跳ねて逃げようとしているのだろうが、俺に抱きかかえられた状態では意味が無い。 トドメに頭頂部から指を突き刺し、底部に貫通させたところで子まりさは動かなくなった。すっきりー! 俺は子まりさの死骸をトイレに流し、何食わぬ顔で居間に戻った。 それから一週間ほど経ったある日のこと。俺はトイレの個室でカッターを使い、五匹目の獲物であるれいむの顔に格子模様を描いていた。 顔に何本もの縦線、横線が走り、タイルのように見えてくる。その四角く切れた外皮一枚一枚を剥ぎ取っていくのだ。 俺に口をふさがれ、皮を剥がれる度に「んー!」とか「んふー!」とか声を上げるのが最高に笑える。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛!!!でい゛ぶう゛う゛ぅ゛ぅ゛!!!」 っ!!? 振り向くと、ドアと床の隙間でゆっくりれいむが白目を剥いて叫んでいる。くそ、見られたか!慌てて手を伸ばし、顔面に指を突き刺して引きずり込む。 「ゆ゛ぶぎゃっ!!!!」 ドアの隙間に擦れて頭から背中までの皮がベロリと剥けるが知ったことではない。そのまま二匹まとめて便座に押し込み、傍にあったブラシで何回も突き刺した後に水で流す。 こうして二匹は下水の彼方へと消えた。脅かしやがって。トイレから出たところで、角を曲がるゆっくりの後ろ姿が見えた。……まさか!? 一瞬振り向いたゆっくりまりさと俺の目が合う。そのゆっくりまりさの目は、やはり恐怖で白目を剥いていた。 口封じに虐待決定。さっきは不完全燃焼だったしな。 が、まりさは俺の腕を間一髪で交わし、ドアの中に転がり込んでいった。くそ、まりさ種の運動能力を馬鹿にしすぎたか…って、ここは。 「このおにいさんはれいむをころしたんだよ!!まりさみてたよ!!」 「そうだよ、れいむもみてたよ!れいむがひっぱられたところからおにいさんがでてきたよ!!」 「おかしいとおもったよ、まりさのこどもがきゅうにいなくなるなんて!」 「やっぱりれいむやまりさがいなくなったのはおにいさんのせいだったんだね!!」 「「「「ゆっくりできないおにいさんはゆっくりしね!!」」」」 数が揃うと強気になるのか、居間の中には口々に言いたい放題な饅頭。 そのすぐ近くには突然の事態に呆気に取られているじいさんばあさん。ったく、面倒なことになった。 「ゆ、こんなおにいさんはまりさがふいうちでやっつけるよ!!」 見ると、箪笥の上には一匹のまりさ。いや、不意打ちって。不意打ちを書ける本人が相手に向かって口に出して言っちゃだめだろ。 「まりさのあざやかなふいうちでゆっくりしね!!」 と、一気に天井近くまで飛び上がるゆっくりまりさ。 ばーか、それだけ時間かけてたら俺がポケットからアレを取り出し、スイッチを入れるのには十分だ。 俺が右手に持ったのは加工場製の新製品。カッターほどのグリップから三十センチほど、太さは一握りくらいの杭が飛び出る。そして狙いを定め、空中のまりさに突き刺す! 「ゆ゛ぶっ!!!」 串刺しにしたところで更に手元のスイッチを押す。 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!い゛だい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!」 そりゃあ痛かろう、スタンガン並みの電流を体の中から流されているんだから。 「ゆ゛あwせdrftgyゆくりlp;@:「」!!!!!!」 一気にスイッチを最大限まで押し込みむと、一際大きな悲鳴とともにゆっくりまりさは動きを止めた。おお、口から煙を吐き出してて笑える。 …と。我に返ると、部屋の中には白目をむき、歯茎を露出してガタガタ震えるゆっくり共と、呆気に取られた顔の老人達。やばい、羽目を外しすぎたか。 「ゆうううううっ!!!おじいさんたすけて!!!」 「おばあさん、あのおにいさんがれいむたちをいじめるよ!!!」 「ゆっくりしないではやくまりさたちをたすけてね!!!」 途端に爺さん達にすがりつくゆっくり共。しまった。 この事件は爺さん達を通じて親父の耳に入るはずだ。一応、このゆっくり共は院の備品扱いになっている。 それを故意に壊したと親父に知れれば、今度こそ家を追い出される…くそ、こうなったら野性に帰ってゆっくりを食べて生きるかな…。 「これっ、だめじゃろうがそんなことしたら!」 くそ、うるさい! 「ワシのズボンがお前の涙で汚れちまうだろうに!」 「ゆ゛びゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!!?」 てっきり爺さんの叱責が飛んでくると思っていた。が、耳に届いたのは予想だにもしなかったゆっくりの悲鳴。 驚いてそのほうを向くと、爺さんがゆっくりを左右から引き裂いていた。だが。 「ゆ゛…ぶ……」 そのゆっくりは生きていた。 ゆっくりの頬を両側から掴んで引き裂くことなら誰でも出来る。引き裂くだけならばだ。勿論ゆっくりは死ぬ。 しかし、爺さんに引き裂かれたゆっくりはなお生きていた。皮は破れ、目玉は落ちかかっている。しかし、中身の餡子は形を崩していないのだ。 横方向に三倍ほど伸びたゆっくりれいむ。その外皮が破れ、餡子が崩れないギリギリの力加減。そして餡子が崩れていないので死ぬことが出来ないゆっくりれいむ。 なんだ?俺は何を見ているんだ? 「ゆ゛っ゛ぐり゛っ゛!!!」 再び上がる悲鳴。そちらの方を見ると、今度は爺さんが顔の無いゆっくりと顔だけのゆっくりを両手に持っていた。 顔の無いゆっくりは、顔面に大きな空洞が開いている。一方、餡子の塊に顔部分の外皮をくっ付けただけのゆっくりはそれを見て、 「ま゛り゛ざの゛がら゛だがあ゛あ゛あ゛!!!」 と叫んでいる。一瞬遅れて理解した、この爺さんはゆっくりの顔だけを抉り出したのだ。 こちらも生命活動に必要な餡子は傷ついていないので、ゆっくりまりさが死ぬことは無い。人間で言えば、皮膚を全部剥がされたようなものだろう。 あちこちでそんな光景が広がっていた。ゆっくりを虐待しながら、死の一歩手前で生かしておく。そんな光景が。 今度は俺とゆっくり共が呆気にとられる番だった。 「まさか院長の息子さんも、ワシらと同じだったとはのう!」 「これでワシ等も物陰に隠れてこそこそ虐待する必要もなくなるぞい!」 「へぇへぇへぇ、わざわざゆっくりセラピーをやっとる所を探した甲斐があったわい!」 言いながら、じいさんばあさんはゆっくり達を死の一歩手前で弄んでいる。その手つきは大胆に、そして繊細にゆっくり達の外皮を剥ぎ、餡子を取り出していく。 まさか…、まさか、このじいさん達は……!! 「「「ひゃああ!!虐待じゃあああ!!!」」」 その後、俺はこれまでと打って変わって仕事に打ち込んだ。虐待おじいさん達の思いつく遊びは、どれも斬新なものだった。さすがは年の功。 今日も爺さん、婆さん達が飯を食べ終わると、恒例のレクリエーションの時間だ。 「ゆ゛ぎゅう゛う゛う゛う゛う゛!!!でい゛ぶの゛かわ゛ぎらな゛いでえ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 向こうでりんごの皮のようにゆっくりの皮をナイフで剥いているのは元コックのシゲさん。彼が剥いた二メートル近い長さの外皮は居間に飾ってある。 すでにゆっくりの皮は先端がシゲさんの足元に到達しているが、まだれいむの皮は上半分以上残っている。今日は記録を更新できるかもしれない。 「や゛め゛でえ゛え゛え゛え゛!!!!」 「ゆ゛っぐりでぎな゛い゛い゛ぃ゛!!!!」 すぐそこの壁ではタケさんとマツさんがゆっくりを壁に押し付けながら歩いている。これはゆっくりを壁で擦りながら、より長く生かした方が勝つという摩り下ろしゆっくりだ。 壁にはすでに二十メートル近い餡子の跡が残り、ゆっくりれいむもゆっくりまりさも上半分しか残っていない。 「はっはっは、マツさんのまりさもしぶといのお!」 「タケさんのれいむもまだ死なんのかい!今日のは生きがええのお!」 「「い゛だい゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛!!!!!」」 二人の勝負はまだ続きそうだ。 「しゅごい!おそらがちかいにぇ!」 「おじいざん゛ゆ゛っぐり゛やめ゛でね゛!!おぢびじゃん゛だぢをはな゛じでね゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛!!!」 あっちの木の下ではヨシさんがゆっくり入れに興じている。木の枝の上に置いた母れいむの口元めがけ、赤れいむを投げてやる。 母れいむに何匹の赤れいむを助けさせてやれるかを競うゲームだ。 「ほうれ、しっかり受け止めてやるんじゃぞー!」 「ゆっ!!おしょらをちょんでるみちゃい!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ぜっだいだずげる゛がらね゛え゛え゛!!!!」 おおっ、あの母れいむはすでに三匹目の赤れいむを口で受け止めた。頬の中には二匹の赤れいむが入っており、必死な母れいむの気も知らずにきゃっきゃと騒いでいる。 ここで母れいむから狙いがそれてしまうと、母れいむが口で受け止めようとしてバランスを崩したり、最悪の場合は赤れいむを助けるために後のことも考えず、空中にダイブしてしまうこともある。 と、言っている間に母れいむは五匹目をキャッチした…が、すでに口元からは赤れいむの上半分が覗いている。 後一匹が限界というところだろう。しかし、トミさんの足元のバケツの中には赤れいむがあと四匹。 「ゆ゛びゅう゛う゛う゛う゛!!!!!!!!」 あ。母れいむの顔面に六匹目が当たり、バランスを崩した母れいむは顔から地面に突っ込んだ。口の中から大量の餡子が噴き出すが、あれは母のものではなくその娘達のものだろう。 しばらく痙攣して目元から涙を流した後、母れいむは動かなくなった。 「ゆ゛びゃあああ!!!!いだいよ゛お゛お゛!!!」 「まりちゃにひどいごどじないでぇぇぇ!!!」 「ーーーーー!!!!ーーーーーーーーーー!!!!!」 「でいぶのぎれいな゛がみのげがあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 一方、室内では虐待おばあさん達がアクセサリーを作っている。当然素材は生きたゆっくりだ。 ハルさんが作っているのはどうやら赤まりさで作る腕輪のようだ。三匹の赤まりさがそれぞれ頬を隣のまりさの頬と糸で縫い付けられている。 不器用かつ自制できない俺では、作業の途中で針で突き殺してしまうだろう。 一方、トメさんは作っているのは大作・ゆっくりポーチだ。素材の母れいむの口にはすでにチャックが縫い付けられ、うーうーうなっている。 そちらのほうは置いておき、トメさんはバリカンで他のゆっくりれいむの髪を刈っている。 この刈り取った髪の毛とチャックつきの母れいむの髪を結って肩掛けにするのだ。目玉の部分をくりぬいて小物入れにしたい、と語るトメさん、ぜひ頑張ってもらいたいものだ。 …と、ここでウメさんがおはぎを持ってきてくれた。 作り方は簡単、子ゆっくりの背中に包丁を入れ縦に切れ目を入れた後、裏返してしまうのだ。外皮は餡子の中に埋まり見た目は完全におはぎ。 これを噛むと、求肥のような歯ごたえがして美味しい。 人数分ありそうだし、ここでおやつの時間としよう。 「おぎゃあじゃん、はや゛ぐれい゛み゛ゅ゛だぢをだじゅげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 「も゛っどつよ゛ぐひっぱっでよ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「だまっででね゛え゛え゛え゛え゛!!!おがあ゛ざんもがんばっでるんだよお゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」 「おみずがはいっでぐるよ゛お゛お゛お゛お゛!!!!おがあざんがゆっぐりしでるせいだあ゛あ゛あ゛!!!!」 「おがあじゃんのばがあ゛あ゛ぁ゛!!やくたたじゅう゛う゛ぅ゛!!!!」 「どぼじでぞんなごどいうのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!! 」 院内の庭、溜め池の近くの木には、元大工のゲンさんが作った滑車がつけられている。 池の中心には出られない程度の穴が開いた透明な箱、その中には子ゆっくりが数匹。 箱の上部からはロープが伸び、木の枝に設置された滑車を通って母れいむに結び付けられている。 母れいむがこのロープを引かないと、子れいむたちの入った箱は池に着水。穴から水が入ってきて死んでしまうわけだ。 母れいむはすでにロープを引っ張る力も無くなり始め、近くの草に噛み付き、せめて子供達が池に落ちないようにと支え続ける。 しかしそれが子供達には不満なようで、もっと引っ張れと容赦の無い罵声が飛ぶ。 そんな親子を見ながら、俺は爺さんや婆さんに混じってお茶を飲んでいる。 そうこうしていると、一台のトラックが院の中に入ってきた。おっと、ゆっくりの補充が来たようだな。 「おじいさん、おばあさん!新しいゆっくりが来ましたよ、みんなで迎えにいきましょう!」 「おお、新しいのが来たわい!」 「れいむを三匹ほど譲ってくれんかの、もう少しでポーチが完成するんじゃ…」 もはや泣き喚くゆっくり親子には誰も関心を示さない。俺は足元の石を拾い、かろうじてロープを引く母れいむに向かってブン投げた。 「ゆ゛びゃっ!!!!!」 体の1/3が吹き飛ぶ母れいむ。途端、箱を支える重量が無くなり、子ゆっくりたちの箱は池の真ん中に着水した。 「ゆ゛ーー!!!!おみずがあ゛あ゛あ゛!!!!」 「おみじゅしゃんゆっぎゅりでてっぢぇえええええ!!!!」 水が入ってくるはこの中で暴れまわる子ゆっくり、赤ゆっくり達。 一方母れいむはと言うと、身体に巻きついたロープによって滑車のところまで勢い欲引っ張られ、ぶつかった衝撃で上半分、下半分に体が分断された。 慣性の勢いで二つに分かれた母れいむの身体も溜め池のなかにバシャバシャと落ちる。それを横目で確認すると、俺は爺さん婆さんを促してトラックのほうに歩いていく。 院の年寄りが皆虐待おじいさん、虐待おばあさんと知れてから、俺は親父にゆっくり(を虐める)セラピーの重要さを訴え、ゆっくりの搬入量を以前の二倍に増やしてもらった。 いま、俺と爺さん、婆さんたちの目の前で六十匹近い冷凍ゆっくり達が自然解凍され、あちこちで目を覚ましだす。 全てのゆっくりが目を覚ましたところで、俺たちは満面の笑みでゆっくり達に話しかけるのだ。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 /**** 久々に書いた。ちょっと前までゆっくりさなえの洗脳 群れ崩壊ものを書いていたはずなのに… 群れの状況描写ばかりで虐待も薄く、長ったらしくなって来たので息抜きに書いていたら、こっちのほうが乗ってきた。 ひゃあ!三連休も虐待SSだあ! by町長 /****今までに書いたもの fuku2120 電車.txt fuku2152 大岡裁き.txt このSSに感想を付ける
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(前編から) 「きゃっ!?」 メイド長のナイフを引き抜き、門番を縛っている縄を切る。 支える物を失った門番は、重力に引かれて地面に落ちた。 「………!? あ、ありがとう…」 門番が落ち着くのを待ってから話を切り出した。 「……………」 「な、何よ…?」 「………っ!!!」 「えっ、えっ、え…っ!!?」 俺の姿が突然消えて門番はうろたえている。 俺がどこに姿を消したのかと言うと…。 門番の足元だ。 「頼む、俺を弟子にしてくれっ!!」 「えええええええええっ!!?」 「え~と…、つまり私の技を教えて欲しいのね?」 「ああ、頼む!」 「そもそも、何でドスまりさに勝ちたいの?」 「……………。 あいつは俺が倒さなきゃいけない…、気がする。 だが、今のままでは勝てないんだ…」 「ふ~ん? 何があったのか知らないけど、随分真剣なのね」 「奴を倒す為には、今までの様に唯殴りかかるだけじゃ駄目だ。 あんたの動きとよく似た、奴の舌を使った拘束を回避しないと…!」 「でも私はドスまりさと戦った事なんて無いわよ?」 「だが、あんたの動きの流れがドスのそれと同じだったぞ?」 「変ねぇ…。 れみりゃとだったらよく戦うんだけど…」 「………! それだ、それだよ!」 「えっ、何!?」 「自分なりに敗因を考えていたんだが、どうやら奴の動きのリズムに何かあるらしい。 恐らく奴のゆっくりとした動きのテンポに合わせられなくて捕まれていたんだよ!」 「それと私にどんな関係が?」 「俺はゆっくり相手に格闘する事は無いが、あんたは頻繁にれみりゃを虐めてないか? あんたにはゆっくりのゆっくりとした動きが身に付いているんだ!」 「失礼ね! あれは“虐め”じゃなくて“可愛がり”よ!」 「ともかく、あんたと戦う事で、あんたの技と奴等のテンポを会得したい! 頼む、俺に出来る事なら何でもするから、俺と戦ってくれ!」 「そこまで言うなら…。 でも、報酬は高くつくわよ?」 「任せろ、何だったら彼女に強引に買わされた宝石とか鞄を質に入れても良い!」 「それはどうかと思うけど…」 どんな条件を提示するか門番は考え込む。 「……………! そうね、あなた加工所職員だったわよね?」 「ああ。 何だ、徳用甘味セットでも持って来ようか?」 「そうじゃなくて、ゆっくりが欲しいのよ」 「ゆっくりが? どんな種類のゆっくりだ? レアな種類でも探して持ってくるぞ!」 「じゃあ、ゆっくりさくやをお願いするわ」 「さくや種を?」 「見ての通り、ここ紅魔館には胴付きゆっくりれみりゃが住み着いているわ。 咲夜さんがどこからか連れてきた一匹が、繁殖したり仲間を呼んだものなんだけど、 残念ながら付き人(ゆっくり)がいないの。 折角“おぜうさま”として生まれたんだから、“めいど”も用意してあげたいのよ」 「……………」 何となく、門番の真意は別にある様な気がした。 まさかとは思うが、メイド長に怒られた鬱憤を、さくや種で晴らそうと言うのでは…。 「分かった。 加工所で余っている奴がいないか調べてくる。 もしいなかったら捕まえてくる事になるがそれでも構わないか?」 「それで良いわよ」 「よし、交渉成立だな」 「…で、いつから特訓を始めるの? 今からでも良いけど、 人間のあなたがいつまでも紅魔館の近くにいるのはお勧め出来ないわよ?」 「もう日が暮れてしまうし、今日は帰る事にするよ。 まず加工所に戻ったら在庫を確認して、それから報告に来るから、その時からで頼む」 「分かったわ。 なるべく元気の良い奴を選んでね」 俺達はお互いの予定を調整し、門の前で別れた。 心なしか足取りも軽くなった気がする。 空になった運搬用の台車を引きながら俺は加工所へと急いだ。 「ん? 今、箱が動いた様な…?」 空箱の中に何か入っていたのだろうか? 道の起伏で揺れただけだろうと判断して、俺は忘れる事にした。 俺が加工所に帰り着いた時、辺りは夜になっていた。 当然加工所の営業は既に終了しており、流石に彼女も帰っているだろう。 俺は倉庫に台車を戻す為に、受付の警備員に帰還を報告する。 「遠くまで配達ご苦労様でした。 警備室で鍵を管理していますので、付いて来てもらえますか」 「分かりました」 話しながら、俺は以前忍び込んだ時に出会った相手だと気付いた。 以前の泥棒騒ぎで加工所の警備体制が強化され、 今は常に二人一組で警備員を配置している。 よく見れば、受付に残る方も以前警備室で出会っていた。 「以前の泥棒騒ぎ、大変でしたでしょうね」 「そうですねぇ…。 でも、お恥ずかしながら、僕は居眠りしていたみたいで…。 泥棒の仕業という事になってお咎めは無かったんですが、 大事な本もその騒ぎでどこかにいってしまったんですよね…」 「そうですか…。 それは災難でしたね」 「まぁ、居眠りの罰として諦めるしかないんでしょうね…」 受付に残った奴が持ってるんじゃないかと思いながら、 俺は警備員に付いて行った。 犯人は俺なので何となく気が咎める。 警備員に倉庫の扉を開けてもらい、台車を空箱ごと適当に放り込む。 整理等の細かい作業は明日出勤してからやれば良いだろう。 「それじゃあ俺は帰りますね。 ご苦労様でした」 「お気をつけて」 俺は疲れた体を休める為に一路自宅へと向かった…。 一夜明けて…。 俺は目の前の光景に頭を悩ませていた。 「な、何があったんだっ!!?」 朝少し早めに出勤した俺は、昨日の後始末の為に真っ先に倉庫に向かった。 台車等の道具を保管する倉庫の為、元々大した物は置いていないのだが、 それでも積んである物を崩せば酷い事になる。 そして、それを招いたであろう容疑者が俺の足元で騒いでいる。 「うあ~、おなかすいたどぅ~! はやくぷっでぃんをもってくるんだどぉ~!!」 「な、何でこんな所に胴付きれみりゃがいるんだ!?」 確かにここは加工所だから、逃げ出した奴が紛れ込んだのかもしれないが、 閉鎖状態だった倉庫に忍び込む事は不可能に近い。 第一昨日台車を戻した時には何もいなかった筈だが…? とりあえず、このれみりゃから情報を聞きだすとしよう。 泣き叫んでばかりで埒が明かないので、廃棄予定の不良品を与えて黙らせる。 「あまあまおいしいどぅ~! でもれみりゃはぷっでぃんがたべたいどぅ~!」 「質問に答えたら、考えてやらなくも無いぞ」 「う~、やくそくだどぅ~! ぷっでぃん、ぷっでぃんだどぅ~! れみりゃはこうまかんのおぜうさまだから、 うそついたりしたらさくやがだまってないどぅ~!」 何と言うか、この上なくウザイ。 その上とても読み難い。 漢字表記だけどひらがなで喋っている事にしようかと思うくらい難解である。 ついつい潰したくなってしまうが、情報の為にここは我慢だ。 「それで、お前は何でこんな所にいるんだ?」 「う~、わかんないんだどぅ~! おしえてほしいんだどぉ~」 まさかの質問返し! 聞きたいのはこっちの方だ! 「じゃあ、お前はどこから来たんだ?」 「れみりゃは“こうまかん”にすんでるんだどぉ~」 「………?」 何となく引っ掛かる話だ。 れみりゃ種は自らの住処を“こうまかん”と呼ぶのだ。 こいつも自分の巣の事を言っているのかもしれない。 「なぁ、お前の巣はどこにあるんだ?」 「“す”じゃないんだどぉ~! “こうまかん”だどぉ~!!」 「分かった、分かった! …で、その“こうまかん”とやらはどこにあるんだ?」 「おっきなみずうみのなかのしまにあるんだどぉ~!」 それはまた、ご大層な場所に作ったものだ。 これによって、こいつが加工所から逃げ出したものではなくなった。 「まっかなおやしきで、まっかなみちがあるんだどぅ~!」 「ふぅん…、ゆっくりのくせに中々立派な巣だな」 少し…、いやかなりセンスを疑うがな。 「やしきには、さくやもいるんだどぅ~!」 「ふむふむ、それは良い事を聞いた」 そいつを捕まえれば、門番への手土産に丁度良いだろう。 「ほかにもれみりあやめいりんもいるんだどぉ~!」 同種やめーりん種まで一緒に住んでいるのか。 意外と大きな巣なのかもしれないな…。 「良く分かった。 じゃあお前は、そこからどうやってここまで来たんだ?」 「わかんないんだぉ~! きがついたらここにいたんだどぉ~! ここはくらくてせまくてつめたくてしめっててちらかっててほこりっぽいんだどぉ~! うぁ~~~ん、ざぐやぁあ~~~!!」 「あぁ、もう! 響いて煩いから静かにしてろっ!!」 散らかっていて埃っぽいのはこいつのせいもあると思うのだが…。 「なら聞くが、お前はここに来る前は何をしていたんだ?」 「う~? う~! たしかめいりんとけんかしていたんだどぉ~!」 喧嘩? すると仲間割れでもして逃げて来たのか? 「れみりゃはぐんぐにるでめいりんをつきさそうとしたんだどぉ~! でも、めいりんはぐんぐにるにあたってくれなかったんだどぉ~!」 「そりゃまぁ、幾らゆっくりでも自分から刺さりに行く馬鹿はいないだろうな」 しかしまぁ何だ…、“当たってくれない”とは凄い言い様だな…。 「れみりゃはがんばったんだけど、つかれてしまったんだどぉ~! それできにぶつかってめいよのふしょうをおったんだどぉ~!」 「そうか、良く頑張ったな」 一般的にそういうのを自爆と呼ぶ。 「めからほしがでたんだどぉ~! それでじめんにたおれこんでしまったんだどぉ~!」 「よっぽど打ち所が悪かったんだな」 そんなので、よく今まで生き残れてきたものだ。 「きがついたらゆうがただったんだどぉ~! おなかがすいていたからごはんをさがしたんだどぉ~! そしたらちかくからいいにおいがただよってきたんだどぉ~! れみりゃはそのにおいのするはこにはいったんだぉ~! はこにはあまあまがはいっていたどぉ~! おなかいっぱいたべたら、なんだかねむくなってきて、 そのままはこのなかでねむってしまったんだどぉ~!」 「………? ちょっと待てよ…?」 「ぐっすりねむって、めがさめたらここにいたんだどぉ~!」 「おい…、それって…!?」 「さみしくてこころぼそかったから、ついあばれてしまったんだどぉ~!」 最悪のシナリオが展開している! 「ま…、まさか俺なのか…? この惨状の原因は…!」 「おれ~、さんじょう~? いったいなんのことだどぉ~?」 「と…、とりあえず、こいつは檻にでも入れて、誰かにばれる前にここを片付けて…」 予想外の自体に、俺はどう対処するべきか迷っていた。 もしこれが彼女にでも見つかったら、俺の人生がクライマックスだ! だが、運の悪いことにそこへ…。 「ちょっと! 何よ、これっ!?」 「ひぃいっ!!」 最悪の相手に見つかってしまった。 色々事情があったとはいえ、俺の帰りが遅くなった事と、 帰って来てから直ぐに会いに行かなかった事にも腹を立てている様だ。 「いつまで経っても顔を見せないから、何処にいるのかと探してみれば…!」 「ゆ、許してくれ! 直ぐ終わらせて会いに行くつもりだったんだ!」 「こんな所に胴付きれみりゃを連れ込んで、一体何をするつもりだったの!!?」 「そっちかよ!!?」 とんでもない誤解をされていた! 「うあ~! れみりゃ(のふくがほこりで)よごれたどぉ~!」 「なっ、何ですってぇええええええ!!?」 「お前も自体をややこしくする様な事を言うなぁあああああっ!!」 完全に彼女の怒りのメーターが振り切れた様だ! もし、感情を目視できたとしたら、真っ赤な背景に“怒”と表示されているだろう! 「このHENTAI野朗ぉおおおおっ!!!」 「ちょっ!? くっ、苦しいっ!!」 今にもオーバーヒートしそうな位怒っている! 彼女が鳥の翼の様に両手を広げたかと思うと、俺の首を絞め始めた! 「ぐぉっ!? ………っ!!」 「このまま永遠にゆっくりしなさいっ!!!」 「お…、落ち…着け…っ! こい…つは…、プレ…ゼント…だ…っ!!」 「プレゼントッ!?」 咄嗟の思い付きだったが、彼女は思い止まってくれた。 首締めから開放されて、俺は思いっきり空気を吸い込む。 「げほっ、ごほっ! はぁっ! はぁはぁはぁ…っ!!」 「どういう事か説明しなさい! 最期のチャンスよ!! 口から出任せだったら、それが辞世の言葉になるわよ!」 まさにその通りなのだが、“最期”と言われて必死に酸素の行き届かない頭で考える。 「そいつは紅魔館に住んでいたれみりゃだ! キメラ丸の脱走で実験が中断したから、代わりにこいつを貰ってきたんだ! 胴付きは突然変異みたいなものじゃないか!」 「えっ、ええっ!? そうっだったの!!? わ、私はてっきり、あなたがHENTAIだったんだと…」 「そんな訳あるか!」 「そ、そうよね…。 私はあなたの恋人なんだし…」 「だったら少しは俺の事を信用してください…」 何とか誤解を解けた様だ。 「でも…、私の為に紅魔館から貰ってきてくれるなんて…」 「少しでも慰めてやりたくてな…」 柄にも無く顔を真っ赤にして照れたりしている。 ちょっと(かなり?)厳しいけど、こういうところが可愛いんだよな…。 「でも、一つだけ間違ってるわよ。 胴付きは突然変異の一種だけど、分類は進化に近いの。 勿論最初の個体は突然変異で生まれたんでしょうけど、 より優れた能力を獲得した、ゆっくりの新たな種族として扱うべきだわ。 まだまだ勉強不足の様ね…」 「精進します…」 こういうところが無ければ良いんだけどなぁ…。 彼女との一悶着が終わったので、 それまで彼女の希薄に気圧されて黙っていたれみりゃが再び騒ぎ出した。 「うぁ~! れみりゃはおなかがすいたんだどぉ~! ちゃんとしつもんにこたえたんだから、やくそくのぷっでぃんをよこすんだどぉ~!」 「何? そんな事を約束してたの?」 「うぁ~! ぷっでぃん、ぷっでぃん、ぷっでぃん~!!」 「おい、自称こーまかんのおぜうさま!」 「うぁ?」 「俺は“考えてやる”とは言ったが、一言も“食べさせてやる”とは言ってない」 「うっ、うぁあああああああああ! ぷっでぃいいいいいん!!」 「響いて煩いから静かにしなさい」 「うあっ!!?」 彼女の鋭いボディーブローでれみりゃは一撃で静まり返る。 もしかすると、彼女が加工所最強なのかもしれない…。 「さて、大事なあなたからのプレゼントだし、しっかり研究しないとね」 「あー、そいつに関してちょっと条件があってな…。 実はゆっくりさくや種と交換するって約束なんだ。 もし研究用の奴が余ってたら、一匹分けて欲しいんだけど…」 「大方そんな事だろうと思ってたわ…。 紅魔館のメイド長が主人以上に大事にしているって聞いた事あるもの。 ちょうど繁殖用に何体か届いたから、そこから持って行って」 「助かったよ。 もしいなかった、野山を探し回る羽目になってところだった」 「もう少し計画的に話を進めなさいよね…」 倉庫の片付けを終えてから、れみりゃを連れて彼女の研究室に向かう。 彼女は早速れみりゃの研究に取り掛かると言って、奥に引っ込んでしまった。 話し相手がいなくなってしまい、どうしたものかと考えていると、 貝殻まりさが話しかけてきた。 「ゆっ! おにいさん、おかえりなさい!」 「よぉ、貝殻まりさ。 元気にしてたか?」 以前の泥棒騒ぎ以来、こいつはずっと水槽の中にいる。 溺れたり溶けたりしてはいないが、水を吸って膨らんでいる。 暫くぶりに見たが、今では水槽の3割はこいつの体で占められているではないか。 「おにいさん、おでかけしてたっておねえさんにきいたんだけど、 いったいどこにいっていたの?」 「ああ、ちょっと紅魔館に配達にな…」 「こーまかん? なにそれ? ゆっくりおしえてほしいよ!」 「えーっと…、紅魔館ってのはな…。 大きなお邸…、いや…、お前ら風に言うと巣だ」 「ゆ! とってもおおきなすなんだね! そこにはだれがすんでいるの?」 「邸…、巣の主人はレミリアという妖怪だ」 「ゆっ!? れみりゃはゆっくりできないよ!!」 「落ち着け、ゆっくりれみりゃ種じゃない。 吸血鬼のレミリア=スカーレットだ。 …と言っても理解できないだろうから、そう思ってても良いぞ。 お前らがれみりゃを恐れる気持ち…、俺も似た様な状況でゆっくり理解したからな…」 「ゆぅう…? れみりゃだけどれみりゃじゃないの…? むずかしくてりかいできないけど、おにいさんもこわいおもいをしたんだね…」 「ああ、思い出すのも嫌な位のな…」 「ほかにはだれかすんでいないの?」 「多くのメイド達や居眠り門番娘に瀟洒なメイド長、病弱そうな少女もいたな…。 他にも誰かいそうな気がしたが…、よく分からん」 「いっぱいすんでいるんだね! とってもたのしそうだよ! そのひとたちはおにいさんなの? それともおねえさん?」 「俺が会った限りでは全員女性だったな…。 よくよく考えてみれば、結構凄い所に配達に行っていたんだな…」 その“凄い”には、一部を除いて妖怪だらけという事も含まれる。 今考えても、あんな恐ろしい所からよく生きて帰って来れたものだ…。 尤も、そこに戻って武術を習おうとしているのだから、 冷静になって考えると少し後悔している。 「おにいさん、せっかくかえってきたんだから、まりさとゆっくりあそんでね!」 「いや、悪いがそんな暇は無い。 俺はこれからまた紅魔館に戻らなければならないんだ。 悪いがまた暫く帰ってこないから、彼女にでも遊んでもらえ」 「ちょっとざんねんだよ! でもまりさはゆっくりまってるよ! かえってきたらまりさとゆっくりあそんでね!」 「ああ、考えておいてやる」 適当にあしらってその場を去る。 早く門番に技を教えてもらいに行かねば…。 あいつの技と動きを見につければ、俺はあのドスを倒す事が出来る。 その事を考えると、自然と笑みが浮かんでしまう。 俺は職員から門番との約束の繁殖用のさくやを受け取り、再び紅魔館へと向かった。 「あら? 彼はどこに行ったの?」 「おにいさんはこーまかんにいったよ!」 「ふーん…、随分慌しい出発ね」 「おにいさん、しばらくかえってこないっていってたよ!」 「あら、私にはそんな事一言も…?」 「それでね! まりさ、おにいさんにゆっくりおしえてもらったよ! こーまかんっておねえさんがいっぱいいるんだって!」 「へ…、へぇ…」 「おにいさん、なんだかうれしそうにしていたよ! よっぽどかわいいおねいさんたちなんだね!」 「そう…、なの…?」 「まりさ、ゆっくりりかいしたよ! こーまかんは“おんなのその”なんだね! おにいさんはおんなのひとたちにあいにいったんだね!」 「……………」 「まりさもいろんなゆっくりとゆっくりしたいよ! おにいさんばっかりずるいよね!」 「ええ、そうね…。 とってもずるいわね…。 ずるい子にはお仕置きが必要よね…!」 「ゆ? おねえさん、どうしたの?」 「うふふ…、何でもないわ…よ?」 加工所に戦慄が走る! この日、加工所のゆっくりは何かに怯えてゆっくり出来ない一日を過ごした…。 ~おまけ~ お兄さんが紅魔館に配達に行っている時のお話です。 その頃、お姉さんは加工所で何をしていたのでしょうか…? 「主任、遺伝子分析の結果が出ました」 「ご苦労様。 そこに置いておいてもらえる?」 実験対象のキメラ丸に逃げられてしまい、お姉さんはちょっとイライラしています。 我らが主役のお兄さんにしか辛く当たらない事に決めていますが、 やはり滲み出る怒りのオーラは隠し切れず、近づく者に恐怖を与えます。 怯えた研究員は、報告書を置くと振り返りもせずに出て行きました。 「何も逃げなくても良いじゃない…!」 その言葉の対象は、果たしてキメラ丸なのか、研究員なのか…? 「それで、どんな結果が出たのかしら…?」 お姉さんは報告書の隅から隅までじっくりと目を通します。 報告書には前回キメラ丸から採取した組織片の遺伝子の分析結果が載っています。 この世の物とは思えない奇怪な姿をした生物の遺伝子とは一体…!? 「何これ…!?」 最後まで目を通してから、一度深呼吸します。 少し気持ちを落ち着けたら…。 「ちょっと!! こっちに来て詳しく説明しなさい!!!」 少しも落ち着いていませんでした。 突然の怒声に慌てて研究室に飛び込んでくる研究員。 可哀想に、一息吐こうと入れたお茶を溢してしまった様です。 「あのね、誰が蛇や鹿の遺伝子の分析をしろと言ったの!? 私が頼んだのはキメラ丸の遺伝子の分析よ!?」 「い、いえ…、それがですね…」 「何!? 口答えするつもり!?」 「そ、そんな事は…」 「まさか、こう主張するんじゃないでしょうね? “キメラ丸の顔面以外の部分は全て別の生物の一部でした”とか!?」 「そ、その通りなんですぅううう!!」 頭を手で覆って縮こまる研究員、よく見れば小さく震えている。 お姉さんはすっと右腕を振りかぶると…。 「ひぃっ!?」 「もういいわ…。 少し考えたい事があるから一人にして…」 研究室の入り口の扉を指差して出て行くように指示をしました。 お姉さんの気が変わらない内に、という風に研究員は出て行ってしまいました。 「通りで、顔面の遺伝子を素に作ったクローンが唯のきめぇ丸になる訳ね…」 お姉さんの気迫に押されて今の今まで黙っていましたが、 机の上にはきめぇ丸の入ったケースが置かれています。 小刻みに左右に高速移動していますが、実は震えているのかも知れません。 「でも、どうやって別種の生物を体にしているのかしら…? 拒否反応は起こらないのかしら…?」 お姉さんはケース内のきめぇ丸を見つめます。 「突然変異や進化では説明がつかない…、自然界ではまず起こり得ない現象…。 とすれば、誰かが或いは何かが、それを可能にした…?」 研究室の一角にある大きな冷凍庫に視線を向ける。 そこにはキメラ丸の組織片が保管されているのです。 「私達が見逃している何か…、もしかするとそこに何か秘密が隠されているかも…」 お姉さんは研究室の奥から、貝殻まりさの水槽を置いてある所まで出て来ました。 「おねえさん、おしごとおつかれさま! けんきゅうがおわったなら、ゆっくりまりさとあそんでね!」 「……………。 ねぇ、まりさはどうしてまりさなのかしら?」 「ゆっ? なぞなぞだね!?」 「そうね…。 なぞなぞ…、かもね」 「ちょっとむずかしいけど、なんとなくりかいしたよ! まりさはまりさにうまれたから、まりさはまりさなんだよ!」 「……………! そうね…、そうかもね…」 「どう!? せいかい!?」 「ええ、恐らくそれが正解の筈よ…」 「ゆっへん! まりさ、おりこうでしょ!?」 「そうね、とってもお利巧さんね。 ご褒美に御菓子を食べさせてあげるわ」 「ゆっ!? あまあまさんをくれるの!?」 「ええ、この餡子をお食べなさい」 「とってもおいしそうだよ! いただきま~す!!」 「全部食べるのよ」 「む~しゃ、む~しゃ! しあわせ~!!」 貝殻まりさが食べ終わるのを確認してから、お姉さんは研究室の奥へと戻った。 小さく息を吐くと、何も入っていない机の上のケースを見つめる。 「まりさに生まれたからまりさ、か…」 ゆっくりが考えたにしては良く出来た答えであるが、 余りにも単純な発想である。 「ある意味では…、それが真実かもね…」 お姉さんは、そう呟くと自嘲気味に小さく笑った。 「本当、嫌になるわね…。 本能に忠実な餡子脳の癖に、時に核心を突く様な事も言う…。 何を考えているのかさっぱり分からないわ…」 ふと、お姉さんの脳裏にある事が浮かんだ。 「そう言えば、昔加工所の研究者に、そんな感じの研究者がいたらしいわね…」 お姉さんは、過去の研究者名簿を取り出し、その人物を探す。 「見つけたわ、この人ね…」 かなり前の研究者で、今は引退して行方も分かっていない。 もしかすると、もう亡くなっているのかも知れない…。 「優れた研究者だったみたいだけど、周囲からは倦厭されていたみたいね。 この人の論文、“ゆっくりと他種の同化に関して”か…。 遺伝子研究には詳しかったみたいだし、一度読んでみようかしら…」 お姉さんは、行き詰った研究の手を休めて、お兄さんの帰りを待つ事にした。 (帰ってきたら、地下倉庫の論文を探させよう…) だが、肝心のお兄さんは中々帰ってこないのでした。 …続く。 【冒頭のお話の主人公の敵は、ゆっくりやまめです。 土蜘蛛が木の上を飛び交うなんてとっても幻想的ですね。 毒キノコ等の毒は幻覚を発症するものではなく、瀕死に陥ったので幻覚が見えました。 お兄さんの経験した出来事ではなく、ある本のお話と言う設定です。 貝殻まりさが非常に礼儀正しかったり賢かったりしますが、 お姉さんの教育的指導の賜物だと御理解下さい。 今回原作キャラも登場し、ますます虐めから離れている感が物凄いです。 本当は“ゆっくりコンポスト”が好みなんですが…】 このSSに感想をつける
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「ここはまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!!」 ある森の中、館と家の中間くらいの大きさの煙突がある家の前のことであった。 帽子をかぶったゆっくりが叫んでいる。 この個体はゆっくりまりさと呼ばれる。天邪鬼で意地っ張りな個体が多い種族だ。 ゆっくりまりさはいたずらを好む。好奇心が旺盛なためか、他者にかまってもらいたいのか、 いずれにしろよく悪さをしでかし、叱られることが多い。しかしこのまりさの行動はそれを踏まえてもありえないものであった。 他者の家に勝手に上がりこんでここが自分の家だと宣言している。 この家の主人であろうか、若い女性が苦笑いしている。 自分が留守にしていてしばらくぶりに帰ってきたらこの始末だったためである。 うっかり鍵を掛け忘れていたのを思い出す。長期間留守をするにしては間が抜けたものである。 そんな彼女はどうするべきかと悩んだしぐさをしている。 「ゆっくりしんでね!!」 あろうことがまりさは女性に向かって体当たりを仕掛けてきた。 しかし女性はひょいと身をそらしたため難なくよけられ、 まりさは逆にあっさりと捕まってしまい、押さえつけられることとなった。 女性は目の前のゆっくりは自らの力を把握できていないのだろうか。 そう思ってまりさをつねる。ひたすらつねる。女性はまりさが泣くまでつねるつもりであった。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ゛ぐ・・・」 しかしまりさは耐えている。更に力を込める。それでも泣かない。目に涙を浮かべて必死に耐える。このままでは千切れてしまう。 しょうがないので女性はまりさを外に放り投げて家の中に入った。 「ゆっくりいれてね!ここはまりさのおうちだよ!!」 しかし女性は聞き入れない。このまま家の奥へと向かっている。まりさは焦りを感じていた。 このままあの人間があの子をみつけたらどうなってしまうのかと思い、口に石をくわえ、窓から家の中へと侵入してきた。 砕けたガラスによって細かい切り傷がいくつもできたが、それでもまりさは飛び跳ねて体当たりを続ける。 なかなか根性があるというか図々しさに毛が生えているというか、傷だらけなことをまるで感じさせない挙動だった。 横で攻撃してくるゆっくりまりさの攻撃に女性は内心あきれながら無視して家の中を捜索していた。 まりさの攻撃を全て軽くかわす。勢いあまって壁に激突しても次の瞬間には飛び掛ってくる。 女性は段々と違和感を感じていった。家の中に何か大事なものがあるのだろうか。 この剣幕はただごとではなかった。攻撃性が少なく、 あまりにも弱すぎため無害なものが多い ゆっくり種がここまで攻撃的となる原因はなんだろうと興味を持った。 そしてある部屋の前に来ると扉の前にまりさが立ちふさがった。 「おねがいだからでていってね!!ここだけでもまりさのおうちにして!!」 放り投げてどける。扉を開けると、一匹のゆっくりがいた。あの青白い顔はゆっくりぱちゅりーである。 体が弱く、野生を生きる能力があまりないため、いつもじっとしている個体である。 しかしぱちゅりー種であることを踏まえても、その顔色は病的なまでの白さを誇っていた。 「むきゅぅぅ・・・。」 今にも力尽きそうなその姿。必死なまりさ、これらの状況から判断して、このまりさはぱちゅりーを守ろうとしたらしい。 「ゆぅぅぅぅぅ!!!!」 まりさはぱちゅりーの前にかばうように唸っている。 女性はどうしたものかと思案して、ぱちゅりーを介抱することにした。ここまで弱っているとほうってはおけない。 放り出すには目の前の命はあまりにも儚げで、今にも消え入りそうだった。 事情を知った女性はまりさの方をじっと見つめ、優しく両手で抱える。 「ゆ!?」 すると全力で窓の外に放り投げた。まりさはぱちゅりーを守るために警戒していただけだったが、 人の家に居座られて体当たりされたので、ちょっと気に入らなかったからこれくらいはしてもいいと女性は思った。 「むきゅぅ・・・、おうちにすませてくれてありがと・・おねぇさん・・・」 しかし一向に良くはならない。いくら喘息もちで死にやすいとはいえ、これは少しおかしかった。 女性は怒りが収まり、ぱちゅりーにお願いされたこともあったのでまりさを家の中に入れてやった。 まりさの体にあるガラスでできた傷は浅かったが、女性は一応手当を受けさせようとした。 「ゆっくりはなしてね!おねぇさんとはゆっくりできないよ!」 しかしまりさはそれを拒み、ぎろりと睨み付ける。 まりさはずっとぱちゅりーのそばにいた。 まりさはとても心配に思っていた。唯一の友達であるぱちゅりーが調子が悪い。自らの手で餌を食べることができなくなり、 一向に動く気配がない。以前自分達の家であった木の空洞にぱちゅりーをひとりにしておくと、 蛇などの動物が来たときに食べられてしまう。そのため、丈夫で安全で誰も住んでいない人間の家を探し出し、 ぱちゅりーを引きずって連れてきたというわけである。そこで留守にしていた人が帰って来たというわけであった。 女性は、この二匹を追い出して次の日玄関先で死なれたら目覚めが悪いと思った。 結局、女性はまりさとぱちゅりーを家に居候させることにした。 それから人とゆっくりの奇妙な共同生活が始まった。 まりさはぱちゅりーと四六時中いっしょにいる。女性は信用されていなかった。そのため、餌をとりにいくこともしていなかった。 まりさが留守の間にぱちゅりーと女性の二人だけが残されることを警戒していたのだろう。 いくらなんでもこれでは本末転倒だ。女性がこのままでは二匹が飢え死にしてしまうと思って食べ物を与えると、 まりさはまず毒見をしてからぱちゅりーに咀嚼した食事を与えた。 消化しやすくするためであろう。 まりさは明らかに人間不信であった。もしかしたら以前人間にひどい目にあわされたのかもしれない。 だからといって女性は特になにをするでもなく、二匹に餌を与え続けた。 「ゆっ・・・」 あるとき家の前に傷ついたゆっくりありすがいた。すぐに生殖行為に及ぼうとすることから、 ゆっくり達の間では嫌われているものが多い個体だった。けれども女性はありすを家の中に招いた。 驚くことにこのありすはまりさやぱちゅりーを見ても生殖行為を行わなかった。 最初は驚いたまりさとぱちゅりーだったが、辛い状況が続いたため、警戒心が養われていたためだろうか、 目の前のありすが他者に害を与えるような存在ではないと気づいた。 二匹はありすを受け入れた。 「ありすはきらいじゃないよ!ゆっくりしていってね!!」 「むきゅぅ、よろしくね」 「きやすくはなしかけないでよ。いわれなくてもゆっくりしていくわ!」 そういいながらありすは二匹の手伝いをした。まりさと共にぱちゅりーの看病をしていた。このありすは意地っ張りであるらしいが、 面倒見はいいようだ。ありす種に性欲がなくなるとこんな性格だとは意外であった。 いつからだったかわからないが、三匹は常に一緒にいた。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 「うっうー♪」 ある日女性はとんでもないものを連れてきた。攻撃的な種属のゆっくりふらんとゆっくりれみりゃだ。まりさたちは虐められると思い、 身を強張らせた。しかし 目の前の二匹は何かがおかしい。それもそのはず、ゆっくりふらんには羽が片方ついていなかった。 再生力が強いふらんだったが、 たぶん生まれつき羽がなかったら再生もできないだろう。ゆっくりふらんは飛ぶ性質を持つため、はねる動きは不得意なようで、 ずりずりとゆっくりともいえないほどの速さで這いずり回ることしかできていなかった。れみりゃは叫び続けるふらんのそばで飛んでいた。 こちらはしっかり羽がある。 しかし牙がなかった。 この二匹はたぶんほうっておいたら死ぬだろう。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 またある日女性はゆっくりれいむの家族を連れてきた。母れいむは行くあてがなく困っていたところらしい、 体中ぼろぼろで汚れていた。共に連れてきた子れいむ、赤ちゃんれいむも不安そうにきょろきょろと辺りを見回す。 そんな彼女達はまりさ達に受けいられた。家族が一気に増えた。 「わかるよーわかるよー」 「ちーんぽっ!」 「ケロ、ケロケロ!」 だんだんゆっくり達が増えてくる。いつしか家の中にはゆっくりたちがたくさん溢れていた。みょん、ちぇん、ふらん、れみりゃ、 ありす、ぱちゅりー、まりさ、そしてそのほかの様々な種類のゆっくりたち。 みんなこの家に来るとゆっくりしていた。 彼女達はけんかすることもあったが、そのたびに女性につねられ、叱られることで少しずつ仲良くなり、 いつしか家族の一員となっていった。 女性はあらゆるゆっくり達を家の中に招いた。ここで彼女達に狩りの仕方を教え、食べられるもの、農耕の仕方など、 様々な生きる術を教えていた。 それからまたしばらくたった。ゆっくり達がゆっくりさせてくれた女性への恩返しのため、皆一丸となって働いていた。 家の前には畑が広がり、ゆっくり達が道具を口で使って耕している。 このとき女性は驚いたが、ありすは農耕における用地の運用の仕方や、道具の効率的な使用法をあっという間に覚えていった。一度教えたことを更に発展させて考えることができる。 人間にも難しいことだった。女性はありすに家の中の本を与えて読ませた。女性が難しいからといって買ったまま積んでいた本をありすは次の日にはそらで言えた。 ありすは正直なところ女性よりも頭がよくなっていたかもしれない。ありすの知識は大いに役立った。 体力のあるものは狩りに出かけていた。 母れいむはきのこと山菜を取りに山を駆け回る。最も力があって重いものを持つためだ。途中で蛇や猪などの獣とかち合っても、護衛のみょんやけろちゃん、ちぇん、 ゆっくり達が追い払う。おいしい食べ物を待っている仲間がいるから、だから頑張れる。 そして、留守番をしているものは子守をしていた。 「ゆっくりしね!!!」 「ゆっくりするー!!」「わたしもー♪」「遊んで♪遊んで♪」「ふらんおねーちゃん♪」 「うー、うー♪」 なんとふらんがれいむの子供達にかこまれて遊ばれていた。ふらんは不機嫌だったが、 赤ちゃんれいむたちはお構いなしにふらんにつっかかる。そんな赤ちゃん霊夢にふらんは本気で威嚇しているが、 れいむ達は怪獣ごっこだと思っているようだ。動きの遅いふらんにつかまるほど赤ちゃんれいむはゆっくりしていなかった。 れみりゃはそばで無邪気に飛び回っている。 ふらんは終止不機嫌で、れいむ達に遊ばれた後見かねた女性になだめられていた。 「う゛ぅ゛・・・・・・・・・・・・・・・♪」 ふらんは甘えることにてれを感じているのか、女性と目を合わせなかった。 けれどもその横顔は頬がにやりと緩んでいた。 ある日昼ごろのことだった。女性がゆっくり達にいいことを思いついたと言って、ゆっくり達を庭に集めた。 彼女はときどき突拍子もないことをいいだす。 なにかな、どうしたの、ゆっくり達が皆庭に集まると、女性は背中に何かを隠してやってきた。 ふっふっふっと笑って、もったいぶっている。まるで悪役のような笑い方に、ゆっくり達は不安になった。 そこで女性はジャジャーン、といった擬音が聞こえそうになるぐらい、うれしそうに背中の物を目の前に 出した。それはギター。指でかき鳴らし、音楽を奏でる道具。 みんなで歌を歌おう。それが女性が考えたことだった。ゆっくり達はみんな今日のお仕事がまだ終わっていない と、ばつの悪そうな顔をしていたが、女性はあっけらかんとして、そんなこと気にしないでいいとでもいうように ギターを弾いていった。彼女はまりさに侵入されたとき、家に鍵をかけ忘れたことから考えられるように、 細かいことを気にしないというか、豪快というか、いい意味でも悪い意味でもいい加減というか、そんな人だった。 女性はみなを楽しませようと弾いた一曲。彼女の弾くギターはあまりいい腕ではなかったが、 その楽しそうな雰囲気によって、ゆっくり達はゆっくりせずに大はしゃぎしていた。 「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー」 お母さんれいむは歌っている。音程は高く、以外に上手い。それにしてもこのれいむ、ノリノリである。 「おかーさんすごーい!」 「わたしもうたうー!」 「わたしもー!」 赤ちゃんれいむたちも一緒に歌う。 「へェーらろ・・・むりだわ、これ・・・」 ありすは完璧に歌えないと嫌なのか、早々と歌を止めた。 こういうところで変に意地っ張りである。 しかしそっぽを向きながら口をパクパクとさせ、次回に継げていた。次に歌うときのために必死に練習するであろう。 その顔は楽しそうだった。t 「うー、ゆっくりしね♪」 ふらんまでご機嫌だ。その周りには赤ちゃんれいむたちが集まっている。楽しいときには細かいことは気にしないものである。 姉のれみりゃは踊るように飛んでいる。 「ゆっゆー♪」 「あるーひー♪」 「ゆっくりー♪」「ヘロロォールノォーノオォー」「うっうー♪」「ちんちーん♪」「けろけろッ♪」 その日はゆっくり達の大合唱が森中に響き渡った。誰もがゆっくり平和にすごしていた。 いつしか女性はゆっくり達の母親のようなものになった。 「ぱちゅりー、たのしい?」 まりさはぱちゅりーに尋ねる。 もはや自ら動くことができなくなったぱちゅりー。そんなぱちゅりーは女性に抱えられて、みんなの姿がよく見える特等席に座らせてもらった。 「むきゅ♪」 ぱちゅりーはとても嬉しそうだった。まりさはぱちゅりーのこれほどまでに嬉しそうな顔をみるのは久しぶりだった。 そして、それが最期だった。 空気が澄んだ朝だった。ついにぱちゅりーが死んだ。最後には話すことさえできなくなり、 発作的に餡子を吐き出すようになっていた。ゆっくり達皆が心配そうに見つめる中、 まりさとありすはぱちゅりーのほほに自らのほほを当てて、その最後を看取った。 「ぱちゅりー、だいすきだよ・・・」 「ゆっくりしてね、やすらかにねむりなさい・・・」 ぱちゅりーは力なく微笑むと、 「むきゅ」 と返事をするかのように一言発し、事切れた。 ゆっくり達はこの家に来てはじめて家族を失う悲しみに涙した。 そして、女性はぱちゅりーを弔うことにした。火葬にしようかと思ったらまりさが強く反対した。 「あついのはよくないよ!もうぱちゅりーにいたいおもいをしてほしくないよ!!」 そんなまりさの姿を見て、ありすは何かを感じ取り、まりさをかばうように意見する。 「おねがい!ぱちゅりーがやかれるところをみたくないの!!」 結局、ぱちゅりーは土葬することにした。虫に食われないように厳重に箱につめて、家のそばに石を積み上げて墓を作った。 家のなかのゆっくり達はみな悲しんだ。別れはとても辛い。 それを見ていた女性はこうやってお墓を作ってあげると、いい子は天国にいけると女性はゆっくり達に教えた。 「てんごくってなに?」 「たべもの?おいしい?」 「ゆっくりできる?」 女性は教えた。天国とはいつまでもゆっくりできるところだと。ぱちゅりーはいい子だからそこに行けた、死んだ後には会えるから心配しなくていいよと言うと、 ゆっくり達は嬉しそうにしていた。 ちなみにわるい子は地獄という、ゆっくりできないところに行かされると釘をさしてしつけることもした。 まりさはぱちゅりーの帽子を形見としてとっておくことにした。 その日の夜、まりさは女性に向かって今までの行いをあやまった。 自分の事をずっと気にかけてくれていたぱちゅりー。 まりさが夜寂しい思いをしたとき、いつも体を寄せて寝てくれたぱちゅりー。 ぱちゅりーはまりさの全てだった。 ぱちゅりーが死んだことはとても悲しい。だけど彼女が幸せそうに死ぬことができたのが、うれしかった。 まりさだけでは、ぱちゅりーをあそこまでゆっくりさせることはできなかっただろう。 「おねぇざん・・・いまま゛゛でまりざはわるいごでごべんなざい・・・。おねぇざんのおうち゛をがっでにづがっ・・てて・・・、 まりざもうででぃぐね、ぱぢゅりーのこどありがどう、ありずをよろじぐね・・・」 まりさは初めて女性にあやまった。ぱちゅりーと共に生きるためとはいえ勝手にひとの家に上がりこんだこと、 それなのに追い返そうと体当たりをしたこと、それなのにぱちゅりーを弔ってくれたことなど、感謝をしてもしきれなかった。 女性は何も言わずまりさを手招きした。まりさはぱちゅりーがいなくなったから、外に放り投げられるのではないかと思った。 自分から出て行くつもりであったが、もし恩人にそのようなことをされたらと思うと怖くて仕方がなかった。 まりさは恐る恐るゆっくりと女性に近づいた。 ぎゅぅぅと、音が鳴る。つねられるときのように、しかしまりさはつねられていない。 女性は何も言わずにただまりさを抱きしめた。まりさは女性のあたたかさを感じた。 そして女性は膝の上に載せると子守唄を歌った。 ぽんぽんと優しく頭を叩きながら。 まるで人間の子供のおなかを叩いて母が歌うように。 その歌声は正直あまり褒められたものではなかったが、 まりさは耳を澄ませ、涙で真っ赤にした目を更に赤くしないように閉じて聞き入れた それはまぎれもなく母が娘をあやす姿そのものであった。 もうでていかなくていい。あなたもここのうちのかぞくなのだから。 そのような歌詞であった。 いつしかまりさの閉じた目から涙がつぅっと落ちていた。 まりさはこの日本当の家族になった。 「おねぇさん!これあげるね!おいしいやさいだよ!!」 ぱちゅりーが死んだ日からまりさは女性に対する不信感を完全に失っていた。 今では誰よりも女性の近くに擦り寄って、誰よりも働いている。 食事も女性からうけとるとき、 毒見をするようなしぐさをしなくなっていた。逆に畑で取れた野菜を女性にプレゼントするようになった。まりさは女性への感謝の気持ちでいっぱいだった ゆっくり達を受け入れてくれたこと、みんなが仲良くできるようにしてくれたこと、ぱちゅりーを弔ってくれたこと、 まりさは女性を母親のように感じていた。 それでも憎まれ口をたたいて女性につねられるのは相変わらずだった。 女性がまりさからもらった野菜を調理して、並んでご飯を食べる。まりさはとてもうれしそうだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」 女性はそんなまりさをみて微笑む。まりさもつられてえへへと笑う。 そんなまりさでも女性の体の変化には気がつかなかった。 女性がまりさに気づかれないようにしていたためである。 それでも症状はゆっくり進行していく。 ゆっくり達が目を覚ます。寝ぼけた女性を数匹がかりで起こす。今まで誰よりも早く起きたのに。 みんなで協力して食事をつくる。女の人とは思えないくらい食べたのに。 太陽の下で働く。休む回数が増えた 眠る。眠ったらいくら呼んでも起きない。かとおもえば、一日中起きている日もあった。 こうなってくると、ゆっくり達も気がつく。女性の体が悪いんだと。 だけど女性は人間の医者のところには行かなかった。 軽い風邪だから大丈夫だと。 幸せな日々にもいつしか終わりがやってくる。それはあまりにも突然の事だった。ある日いきなり女性が倒れた。 顔を見てみると赤い斑点が出て、 常に苦しそうな表情を浮かべていた。 1日、2日、3日、1週間、女性はどんどん体が悪くなっていった。 それでも彼女は医者に見せなかった。 まりさ達はかわるがわる看病に努めた。ごはんを運ぶもの、身体を井戸水で冷やして氷嚢代わりになるもの、 女性が行っていた家の管理に務めるものなど、皆女性のために働いた。 それでも病気の進行は止められなかった。 心配するまりさをからかうようにつねる手の力がとても弱くなっていた。 はじめてあったときは泣きそうになるくらい痛かったのに。 女性はもうすぐ死ぬ。ゆっくりたちが女性のベッドの周りに群がっていた、 みな不安そうな顔をしている。 まりさとありすはかつてぱちゅりーに対して行ったように自らのほほを女性に当てていた。 「いままでありがとうね・・・。おかあさん・・・」 ありすが泣きながら女性に話しかける。女性は心配するなと笑顔でうなづいた。 このとき女性は気がついた。まりさの底の一部分が感触が固いと、それはまるでパンを一部分だけ焼いた後のようであった。 以前人間に虐待されたのだろう。火傷によって焦げてしまったに違いない。 女性はまりさがこの先みんなと一緒にゆっくりできることを願った。 女性はまりさに対して二つの望みをつぶやいた。最後の言葉だった。 自分が死んだらここをみんなのおうちにしてね。 ゆっくり達を守ってね 、と そして女性はゆっくり息を引き取った。 まりさがみんなを導いて、みんなが天国にいけるようなゆっくりとして生きていけることを願って。 遺体はゆっくり達の手でぱちゅりーの隣に埋められた。 「おねぇさん、てんごくでもゆっくりしていってね・・・」 それからさらに1ヵ月後、ゆっくり達は女性のいいつけを守って生活していた。女性がいなくなってもゆっくり達は今までどおり、 むしろそれ以上に頑張って生きていった。まりさとありすがリーダーとなり、ゆっくりたちをまとめていた。 女性が生前そうだったように、行き場のないゆっくり達を受け入れ、いつしか家はゆっくり達の楽園となっていた。 そんなある日の夜、人間が尋ねてきた。壮年の男が数人いた。ゆっくり達は突然の人間に驚いた。 しかし以前女性に対してとてもやさしくしてもらっていたことを覚えていたゆっくり達。みな口々に歓迎している。 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 まりさは以前人間に虐待されたことを忘れてはいなかったが、女性に心を開いたことで以前より人間の事を嫌ってはいなかった。 そして女性の最後の言葉を思い出し、その願いをかなえることにした。 「ここはみんなのおうちだよ!! ゆっくりしていってね!!!」 うん、ありがとう、ゆっくりさせてもらうね。 男はそう答えた。きれいな瞳をした男であった。 男達はこの場にいるゆっくり達を見て、何か話し込んでいる。牙と片羽のないふらん、牙のないれみりゃ、 その他様々なゆっくりたちをじっと見た。 特に驚いていたのは、ありすをみたときであった。男の一人がありすに振動を与えた。 「なにしてんのよ、えっち!!」 ありすは不機嫌そうな顔をして去っていった。男は信じられない顔をした。発情しないありすがいるなんてと。 ところでここに女の人は住んでいなかったかな? そう男のひとりがゆっくりに質問した。 なんでも男達は女性の知り合いらしい。ゆっくり達は女性の事を話した。皆バラバラに話すので聞き取るのに一苦労であったが 、男達は彼女がどれだけゆっくり達愛されていたのか理解した。そして彼女が病気によって死んだことを伝えると、男達は悲しそうな顔をした。 しばらくうなだれ、考え込んでいた後、男の一人が意を決したようにまりさに話しかけた。 「おねぇさんのお墓はどこにあるかな。お墓参りをしたいんだ。」 まりさは女性のお墓に案内した。 石を積み上げられたあのお墓に。 ここでおねぇさんが天国でもゆっくりできるようにいっしょにお祈りをしようと思っていた。 人間も自分達と変わらないと、 そう信じていた。 数刻後、男は女性の墓を掘り返していた。隣にあるぱちゅりーの墓も同時に掘られている。 まりさは何が起きたのか理解できなかった。なぜこんなことをしているのだろう。 死んでゆっくりしている人をなんで無理やり起こすのだろう。 おねぇさんもぱちゅりーも天国でゆっくりしているのに、ゆっくりさせてあげないなんて・・・。まりさとありすは男に飛び掛った。 「やめて!!どうじてそんなことをするの!!」 「やめてぇぇぇ!!」 男のひとりがまりさとありすを押さえつけながら、段々と墓が暴かれてくる。 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、 悪臭がただよう。まりさは口から餡子を吐きそうになった。 まりさの頭にあったのは、生きていた頃のおねぇさんの美しい姿とぱちゅりーの青白い顔であった。 しかし、目の前にいるものは、 にてもにつかない ぱちゅりーってこんなくろかったっけ? どろだんご・・・ あのシろいむしってナに たくさんいるよ となりのオおきいのは ひと? もの? くろい あのおなkaカらでるデろでろってなに・・・ あnこ? 「あ・・・あ・・・あぐ・・ぐぺぇぇ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ」 「ひどい・・・、なんで・・・」 あまりの衝撃にまりさはおねぇさんがどのような顔をしていたのか思い出せなくなった。 全く面影がなければそれでよかった。しかし着ている物、髪、顔の無事な部分と ぱちゅりーのそばに埋めた影響か、ところどころ虫に食われた部分がまりさの思い出の中のおねぇさんと混ざり合ってしまった。 おねぇさんといえば、目の前のくろくて、ぐちゃぐちゃで、べちゃべちゃなものしかわからなくなっていた。 男達は辛そうな顔をしながら女性を引き上げ、顔の確認をした。 男達の数人が泣いていた。リーダーらしききれいな瞳をした男が彼らをなだめた。 そしてしばらく話し合った後、男達は何かを決意した顔をした。男はまりさとありすを家の中に入れて、外から閉じ込めることにした。 男達の目的はこうであった。 ゆっくりから他の生物に媒介するウィルス、 感染方法はゆっくりを食べることと、ゆっくりを食べて感染した生物からの血液、経口感染であった。 そのウィルスはゆっくりと時間をかけて体内に潜伏し、発症の際は死亡率が40%を越えていた。 このウィルスにかかったゆっくりは先天的な奇型・変化をもって生まれる。 病弱さに拍車がかかったぱちゅりー、羽のないふらん、発情しないありすなどがそれにあたる。 男達はここに住んでいた女性の友人と加工場の職員で構成されていた。 彼女がゆっくりを襲っている犬からゆっくりをかばって噛まれ、このウィルスに感染していた可能性があること、 そのために森のはずれにある家で最後を迎えようとしようと失踪したこと、ついに家の位置を探し当てたこと、 最近わかったことだがもし感染していたら死体を焼却しておかないと動物によって死肉を漁られ感染が広がること、 彼女のような犠牲者を増やさないために感染源の奇型・変種ゆっくり達を炎によって滅菌処分する目的でこの場を訪れていた。 加工場の人間達にとってゆっくりは食料。それ以上でもそれ以下でもない。里の人に美味しく餡子を食べてもらいたい。 それだけを考えて仕事に励んでいる。しかし目の前のゆっくりが他の生き物に害を及ぼすと知ったとき、人を守るために自らの仕事を失うことを躊躇しない。そこには私情は一切なかった。 対して、女性の知り合いたちは私情によって動いている。彼女がまだ生きていた頃、世話になった者達の一部である。 彼らは彼女のような犠牲者を出さないようにゆっくり達を駆逐しようとしていた。それが彼女の意思とはかけ離れたものと知りながら。そんな彼らがやすやすと目の前の仇を逃がすはずがなかった。 この二つの思想を持つ包囲網からは、決して逃れられないだろう。 まりさは家の窓から女性とぱちゅりーが焼却されるのを見ていた。 まりさの母がわりであるおねぇさんとぱちゅりーはゆっくり燃えていった。熱いのは苦しいと思ってまりさは火葬をしなかった。 その結果があのどろどろの物体だった。 静かに、ゆっくりと炎は一人と一匹を包んでいく。その空気は以前おねぇさんとぱちゅりーが死んだときのお葬式のようであった。 違うのは、おねぇさんとぱちゅりーが穏やかな顔をしていなかったこと。 しばらく後、一人と一匹の遺体は真っ黒に焼き尽くされていた。 ぎろりと、男達がゆっくりが住む家のほうを向く。 まりさはきれいな目をしていた男と目が合った。男の目はもう曇っていた。疲れたような顔をして、生気を感じさせない。 それでもふらふらと家の方に近づいてくる。幽鬼のように。そしてそれにつられて他の男達もついてくる。 手に持っているのはたいまつ。 百鬼夜行そのものだった。 そして男達は、まりさたちの住む家目掛けてたいまつを放り投げて火をつけた。本格的に滅菌作戦を開始した。 「みんな、にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 まりさが叫んだ。まりさは火の怖さを知っている。昔人間に捕まったとき、仲間と一緒に網の上で火にあぶられたことがある。 熱さから逃げるためぴょんぴょんと飛び跳ねる。しかし跳ねてもはねても火に接している底が熱くなる。 ほんの少し火に触っただけなのに体がこんがりと焼ける。それを見ている人間達は笑っていた。 誰が速く死ぬか当てる遊びをしていた。 まりさは運よく最後まで生き残り、死なずにすんだ。仲間達は焦げ付き、食べられもせずに放置されていた。 あの時と違うのは、人間達が遊びではなく、殺すことを目的として火を使っていることであった。 皆逃げる。しかしどこに逃げればいいかわからない。 部屋の中をひたすらうろうろとするばかり。パニックを起こしたゆっくり達は、部屋の中から出ることさえ考え付かなかった。 「ゆ゛ぎぃ゛ぃ゛ぃ!」「ゆ゛ぐえぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ !!」 放り投げられた火の近くにいた数匹のゆっくりが悲鳴を上げる。体に直接火を浴びたため、髪の毛から引火して体中が火達磨になっていた。 それはある怪異を髣髴とさせた。 鬼火と呼ばれる、宙を舞い、駆けずり回る火の玉。 違うことは、それが地を這うことであった。 「ゆ゛っぎゅり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」 「ゆ゛っぐぃざぜでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ!」 家の外に火達磨のゆっくり達が飛び出した。 もはや飛び跳ねることもできずにごろごろと地面を転がっている。 けれども火はゆっくり達の体を蹂躙するのをやめなかった。ごろり、ごろりと地面に向かって体をこする。けれども 全く効果がない。ひらすらに転がる。転がって転がって、何かにぶつかって止まる。それは男達の足であった。 ゆっくりにぶつけられた男は火にあおられ、熱さのあまりのけぞる。それをかばうように隣の男が火の玉を踏み 消す。その中にある命ごと 「ごぼっ!!」 「「ゆ゛っ!!!」 あっけない。あまりにもあっけない最期だった。これまで苦楽を共にしてきた仲間達。 同じ食事をし、共に笑い、泣き、一つ屋根の下に眠ってきた仲間達。ほんの数時間前までは隣で笑っていた。 ほんの数時間前までは。 今までこの家で体験した死とは違い、何の思いやりも見られない死は、ゆっくり達の心をぐちゃぐちゃに掻き回す。 仲間の悲鳴が現実から心を遠ざけ、炎の熱さが現実に心を引き戻す。ゆっくり達はパニックを起こした。 これから自分達にどのような運命が待ち受けているかをぼんやりと感じながら。 そう、悲劇はまだ終わっていない。これはほんの前奏にすぎないのだから。 「みんなはやくにげて!!ゆっくりしちゃだめだよ!!」 まりさはみんなを逃がすようにした。。 外には逃げられない。まりさは家の中の上の方へ、上の方へと 逃がすようにした。火は上に昇るが、地上は囲まれてしまったため、これ以外に逃げ道がないためである。 まりさは率先して皆を助けようと足掻く。懸命に足掻く。 おねぇさんに皆の事を頼まれたから・・・ 「ありすー、どこー!!でてきて!!にげるよ!!」 アリスの姿が見えない。はぐれてしまったのだろうか・・・。そういえば家の中に放り投げられたときから見ていない気がする。 ありすを助けに行くことも考えたが、まりさは目の前のゆっくり達を見て皆を逃がすことを選んだ。ありすならきっと大丈夫、 ありすが死ぬとは思えない。すぐにあの憎まれ口をたたいてくれるはずだ。 ゆっくり達は2階に上がり、1階より炎の進みが遅いことに皆少しほっとした。 しかしまりさは気を緩めない。皆に向き合って、大声で呼びかける まりさは火があっというまに広がることを知っていたので、皆を3階に誘導した。 「こっちだよ!うえにあがって!!うえにあがればゆっくりできるよ!!」 先陣を切り、階段の上に立って、ゆっくり達が階段を上ることを待っていた。 上が安全という根拠はないが、こうでもしないと皆パニックを起こす。 はやくこっちにくるように、恐怖に震えたゆっくりたちを励ます。 そのとき、 ビュッ!! ゴォォォォォォ!! いきなり外からたいまつが投げられた。窓ガラスを破り、階段を炎が包み込んでいく。ゆっくり達は散り散りになってしまった。 3階部分にはまりさしかいない。炎によって分断されてしまった。潜り抜けることは不可能だ。まりさにとっては不幸なことに、 皆を誘導するために急いで階段の前に行ったため、まりさのみ助かっていた。 まりさは階段の上から一部始終を見届けることになった。 「「「おがーざーん!だずげでぇぇぇ!!」」」 炎による恐怖で動けなくなった赤ちゃんれいむ達。 炎。それは母ゆっくりれいむの命への祝福をする優しいあたたかさとは違う、命を否定する激しい熱。 ぷるぷると振るえ、目の前の母をひたすら呼び続ける。 「わだじのごども”おぉ゛ぉ゛ぉ!!!」 母れいむは赤ちゃんれいむたちを庇おうと自らの口の中に入れた。 こうしておけばみんな一緒に逃げられる。そう思っての行動だった。 しかし誤算があった。口内に大量の子供達を含んだ母れいむはゆっくりとしか動けない。 はやく逃げなきゃこどもたちが死んでしまう、 はやく逃げなければ ぐらり そんな母れいむの思いとは裏腹に、母れいむの上に燃えた柱が倒れてきた。 大きい柱が ゆっくり、 ゆっくりと 「ん゛ん゛゛ん゛ん゛んん~~~~」 しかし子供達をくわえて動きの鈍った母れいむは更にゆっくりしていた。 ずりずりと這いずる様にしか動けない。 その目は落ちてくる柱をうつしていた。逃げようとすれば逃げ切れるようにも見えた。 じたばたともがき、目の前を見て、避けきれるまであと少し、あと少しのところまできた。 しかし、結局無理だった。あと1メートルほど進めば避けられたのに、それもかなわず柱が母れいむの頭を捕らえた。 ぐしゃり 母れいむは横に3倍ほど広がってしまった。悲鳴を上げる暇さえなかった。餡子が飛び散り、ぴくぴくと痙攣している。 口の中の子供達はつぶれて混ざり合っているだろう。 もう二度と母れいむの美しい歌声を聞くことはできない。 炎で分断された更に別の場所、移動の遅いゆっくりふらんは自分を助けようと近づいてくる子れいむたちとれみりゃを追い払っていた。 「ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしねぇ!!!」 鬼気迫る形相でこっちに来るなとひたすら吼え続ける。しかしそれでもゆっくり達はふらんにむかっていく。 ふらんをくわえると、少しでも火のない方向目掛けて引きずっていた。 「ふらんちゃん、ゆっくりしちゃだめだよ!」 「いっしょににげよ!」 「あきらめちゃだめだよ!」 「う゛~、ごぁい!こぁ゛い!いっしょににげる!おいで!!」 しかし炎は容赦なくふらんとゆっくり達を包み込む。 まるで焼き栗。炎の中で小さな塊がぱちぱちとはじけていく。それとも焼き芋とでも言おうか、餡子が焼けるいいにおいがあたりに広がっていた。 炎に慈悲はない。ただ全て燃やすだけ。そこには善意も悪意もない。 再生力の高いふらんとれみりゃはすぐには死なない。目の前でれいむ達が焼き死ぬところをゆっくりと見ることとなった。 最初はあまり気に入らなかった。自分がおもちゃにされているようでイヤだった。食べてやろうと思ったことも一回や二回じゃない。 だけど、だんだん一緒にいると楽しくなった。からかわれるのも悪くなかった。自分がからかわれるのに慣れてしまっただけなのか、 それともなにか別の理由があるのかわからない。ただ、ふらんはいつしかみんなの笑っている顔が大好きだった。 「あぢゅいよ゛おぉおぉ゛ぉ゛ぉぉ」 「ゆっぐりじでてよぉ・・・」 「ふら゛んおね゛ーじゃんっっっ!だずげでぇぇぇ」 そんな仲間達が、自分を助けようとしたから、ふらんを助けようとしたから、苦しそうな顔をして消えて行く。 真っ黒になりながら。そしてれいむ達が焼き死ぬと、今度はれみりやとふらんがゆっくりと死ぬ番だった。 「う゛・・・・、」 ふらんの目の前でれみりゃが焼けていた。普段の無邪気な表情とはかけ離れた苦悶の表情だ。 いつも自分の近くにいた姉。いつもへらへらとして弱そうで、ずっと姉扱いはしていなかった。 だけど、そんな自分を、ふらんをれみりゃは助けようとしてくれた。 れみりゃは紛れもなく自分の、ふらんの姉だった。 「ゆっくりしね・・・ゆっ・・・」 ふらんは何もできない自分がうらめしかった。 結局、最期まで姉扱いをしてあげることはできなかった。 生まれて初めてふらんは泣いたが、涙は蒸発してしまい、誰にも見られることはなかった。 炎が辺りを包み込み始めていた。 ゆっくりできないところが地獄なら、ここはまさにそれであった。地獄というコンサートホールでゆっくりの悲鳴の大合唱が奏でられている。 音の大きさはバラバラ、音程はバラバラ、リズムもバラバラ、共通しているのは苦痛を表現した歌だということ一点のみであった。 まりさはこのときほど自分手がないことをうらめしくおもったことはなかった。 耳がふさげないため、ゆっくり達の悲鳴があますことなく聞こえてくる。 「ゆ゛っぐり゛い゛い゛い゛ーー!!」「ゆ゛っぐり゛でぎる゛どお゛も゛っだどに゛い゛い゛い゛い゛い゛いい゛い゛い゛!!」 「ぐぉぼ!!」「ゆるじでぇ!! あづいよぅゆうぎゃあぁあ゛!!!」 「どおじでぇえ゛ぇぇっごんなごどずるのぉぉ゛お!!!」「ゆ゙ゎああああああああ」 「おねぇざんだずげでぇぇぇ」「ぶぎい゛い゛い゛い゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「わからないよ!!!わからないよおおおおお!!!」「ゆっぐりだずげでええええ!!!」 「 ゆ゛っぐり、じだい、じだいよおおおお!」「びゅっぐりゃぃぃぃ!!」「おぎゃぁぁぁざぁあぁぁん!!」 「いや!ゆっくりしてよう!や・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」「がぼッ、ガボボッ、い゛や゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 「し、じじにたくないよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」「なんで!なんで!!なんでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!?」「んほおおおおおおおおおおおおお!」「う…うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」 「ぢんぼぼぼぉおぉおおっ!!!」「う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!」 あ゛づい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「ゆーーー?!い゛や゛だぁぁぁぁぁぁ!?あづいいぃいぃぃいl?!」 「ひ゛ぃぃい゛い゛ぃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛ぁっ!」「ゆっぐりじだがっだよー!!!!!」 「……ゲロ゛ォォオゲロオォオオォっ!」 おがあざんどご!? み゛ん゛な゛どごぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!? みぇな゛いぃぃ!!!」 「 ゆ゛ゆ゛っ゛っ゛ーーーーーーーーー!!!!」「あ゛づ!! け゛む゛い゛よ゛お゛ォ!!!」 「おうち゛でみ゛ん゛な゛どゆっぐり゛じでだだげな゛のに゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」 そして大合唱が終わりを告げた。まるで焼ききれたカセットテープのようにぷつりと音が消える。 もう誰も生き残っていないだろう。 みんなと分断されてからあっという間の出来事だった。 だけど、みんながどう死んだか、その様子は全く同時の出来事だったが、全てまりさの目に映り、記憶に刻まれた。 目をそらせなかった。よって、一匹一匹、全てのゆっくりの死に様が余すことなく焼きついた。 結局おねぇさんとの約束を破ることになってしまったことになって、申し訳なかった。 そしてそれ以上にみんな大事な仲間だったのに、大好きだったのに守れなかったことを後悔した。 まりさは死を目の前にして、それでも火から逃げることを選んだ。 火は・・・・・・・・・・どうしても怖かった。 3階にたどり着いた。目の前にありすがいた。 いなくなっていたかと思ったありす。まりさが気がつかないうちに死んでしまったのかと思ってしまった。それは一番嫌だった。 とにかく無事でいてよかった。生きていてくれてうれしい。 「ありす!いままでどこにいってたの!!しんぱいしたんだよ!!」 「わるかったわね・・・、みんながにげるためのどうぐをつくっていたのよ。それよりみんなは・・・」 「しんじゃったよ・・・。れいむたちもふらんもれみりゃもみょんもちぇんもみんなみんな!!ひでやかれちゃったよ・・・」 ありすはまりさから目をそらした。生き残っているのはまりさとありすだけ、 ありすは一瞬呻いて、暗い顔をしたが、急がないとまりさたちも危ない、 ありすはまりさをある部屋に誘導した。煙突のある暖炉とつながっている部屋だ。 煙突の下にハンモックがあり、傘がついた大きな箱のようなものが乗っていた。 「まりさ、まずこのうえにのって」 まりさは箱の中に入れられた。結構広かった。 「ゆ?これからどうするの?えんとつからにげようとしても、そとにはにんげんがいるし、えんとつもふさがっているよ!」 「いいからここでじっとしていなさい!そうすればとおくににげられるわ!」 ありすの作戦は、まず煙突を発射台にするため、その中間あたりに箱とハンモックで弾を作り、 その下に部屋との仕切りをして、部屋の中を密閉する。 そうすると熱によって膨張した部屋の中の空気が逃げ場を求める。 下の仕切りが燃え尽きることで外に空気が逃げる。その勢いを利用して箱ごと飛び上がるというものであった。 性欲を失い、リミッターがはずれたためか、ありす種の知能は本来の力を発揮していた。まさに賢者そのものであった。 「よくわからないけどすごいね!はやくにげよう!いっしょににげようよ!!」 「まってて、まずこれ、ぱちゅりーのぼうし。こんなだいじなものをもっていかないなんてまりさったらほんとにばかね・・・」 「ゆぅ、まりさはばかじゃないよ・・・。でも、ありがとね!ぱちゅりーもいっしょだよ!」 「それから、これ、わたしのへあばんど、もしこれをなくしたらおぼえてなさいよ・・・」 「なんでありすのへあばんどをくれるの?ありすがもっていればいいのに!?」 「それから、あなたのこときらいじゃなかったわよ・・・。」 ありすはまりさのほほに自分のほほを触れさせた。人間が今生の別れの際の抱擁を行うように・・・ 「ありす、どうしちゃったの!!なんかおかしいよ!!ゆっぅ・・・ゆぅ!」 ありすはいきなりまりさ目掛けて体当たりをした。 「ゆぇ!」 ありすは泣きながら 「ゆ゛・・・」 何度も 「あ・・・ありす・・・」 何度も そしてまりさは動けなくなっていた。 「このしかけはね、だれかがふたをしたでしめるこがひつようなの・・・じゃあね、まりさ。そこでゆっくりしていってね・・・」 傷ついてこの家に来たありす。ここに来るまで、その生活は決して幸せなものではなかった。 一日の食事に泥水をすするのみのことが珍しくなかった。 ぼろぼろになって、体を治す暇さえなく這いずり回る日々。 だけど決して弱みを見せない。見せたくない。 そんなありすがゆっくりできたのがこの家。初めての仲間。最後に残った家族。 ありすは自分の命の使い方を決めた。 ありすは部屋の中に残った。まりさを助けるために。まりさは動けず、そんな彼女の姿をじっとみていることしかできなかった。 そして炎が部屋に侵入してきた。ありすは仕切りをした。まりさはありすの姿が見えなくなった。 姿が見えなくなってもありすの声が聞こえてくる・・・ 「ひぎゃぁ゛ぁ゛ぁっぁ゛ぁぁぁ!!!あ゛ぢゅ゛いぉよぉぉ゛ぉぉ!!」 まりさは知っている。火による熱さはは決して我慢しようとしてできるものではないと・・・ 「ぱじゅりぃ゛ぃぃだずげでぇ゛ぇぇ!!おねぇざあん゛ん゛ん゛んんん゛!!じにだくないよぉおぉ・・・」 絶対に聞きたくなかった声が聞こえてくる。ありすが今まで一度も出したことのないようなひどい声だ。 「ま、まりさ・・・ゆ・・・・ゅぅ・・・ゅ・・・ゅ・」 最期にありすの頭に浮かんだのは、女性に連れられ、まりさとぱちゅりーに始めて出会った光景だった。 そして仕切りが燃え落ちて、逃げ場を失った空気によりまりさは煙突から発射された。 ある木の空洞にまりさはいた。あの家に住む前に住処にしていた家だった。ここはまりさ『だけ』のおうちだ。 結局あの日まりさは逃げ切るのに成功した。 煙突より遠くに飛ばされ、気がついたらもう夜が明けていた。 皆と住んでいたあの家に戻ると、全てが灰になり、何も残っていなかった。 畑も、ギターも、そしてみんなの死体も。 まりさはあの日から、起きていると仲間たちの悲鳴を思い出すためにゆっくりすることができなかった。 まりさにとってゆっくりするために必要なものはおうちではなかった。 仲間が欲しかった。仲間さえいればどこでもゆっくりすることができる。 しかし今となってはゆっくりはまりさだけになってしまった。人間たちの滅菌作戦によりこの一帯のゆっくりは全滅した。 だれかと一緒にゆっくりすることはもうできない だからといって人間とはもう会いたくない。おねぇさんのようなやさしいひととおじさんたちのような怖い人、 どっちが本当の人間かわからなくなった。やさしくされた後に裏切られるのが怖くなった・・・。 だったら死んでしまえばいい。そう思ったことも何度もあった。しかしそのたびにまりさは結局死にきれない。 死ぬのは怖かった。おねぇさんのお願いであったみんなを守ること、それができなかったまりさは地獄に落ちるだろう。 でも、ぱちゅりーの帽子とありすのヘアバンドをかぶって眠るとみんなとの楽しかった日の夢が見れる。 起きているときは仲間達の惨たらしい最期しか思い出せなくなったが、夢の中では現実では決してありえない、幸せな光景がある。 まりさはおねぇさんに抱きしめられて、 ぱちゅりーが元気に外であそんで、 ありすが意地を張って、 れいむ親子が歌って、 ふらんがからかわれ、 れみりゃが飛び跳ね、 ゆっくり達みんなが笑っている。 そんな夢。 まりさは夢のほうがいいのなら、ずっと夢を見つつけることを選ぶ。現実なんかどうだっていい。 ゆっくりねむろうとまりさはまた夢をみようとしたとき、家の中に蛇が侵入してきた。うっとおしい。せっかくいい夢をみていたのに。 まりさはぼんやりと、二度と誰かに「ゆっくりしていってね」といえる日はこないと思った。 「ここはまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!!」 ------------------------------------------------------------------- 平成20年8月17日 最後にケジメをつけるため、加筆修正しました。 これにてssを書くことを引退します。作者の方々のご活躍をお祈りして、 ゆっくりスレのこれまで以上の発展を願っています。今までありがとうございました。
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※人間視点100% ゆっくりが嫌われるまで 作者:古緑 俺がまだ家族と同じ家にいた頃 家族揃っての外食の為に家を開けた夜に ゆっくりが僅かな隙間から家に入り込んでいた事があった。 このゆっくりとはいつの間にか日本に湧いた生き物だが それまで俺の住む地域ではゆっくりなんてほとんど見る機会はなく 年に数回山の近くで迷ってるのを見るぐらいだった(それも直ぐに山に入っていってしまう) なのにどういうワケかあの頃はゆっくりが沢山街に下りて来た。 トンガリ帽子のゆっくりの5匹から成る家族だった。 確か名前はゆっくりまりさとか言ったか。 その大きなゆっくりまりさが一匹と小さなゆっくりまりさが二匹、 短めの金髪に赤い髪飾りを乗せたゆっくり (名前を知らないから赤カチューシャとでも呼ぶ)が大小それぞれ一匹づつ。 ゆっくり達は破いたスコッティのティッシュや新聞紙を床にバラ撒き、 テーブルクロスを引っ張ってその上にあった皿を5枚程割ってくれた。 その際落とした昼の食べ残しの焼そばと観葉植物を食べ散らかし、 俺が家族と共に家に戻った時の居間はまさに惨状。 その時俺は産まれて初めてゆっくりから声を掛けられた。 それによるとここは自分達の家だから出て行って欲しい、だそうだ。 結果から言うと摘み出すという形にはなったが、 両親も俺も最初は話し合いで解決しようとした。 というのも当時俺も家族もこの生物は言葉が通じると知ってたから こちらの正当性を理解してくれると思っていたからだ。 (地球は皆のモノという意見が両方の間で正当性を持つなら話は別だが) それにゆっくりがどんな牙を持っているかもしれず危険だったというのもある。 この家族が例え団地中のどこの家に入っていったとしてもきっと同じ扱いを受けた事だろう。 確かに言葉は通じた。君たちと呼べば何?と答え 出て行って欲しいと言えば、ここはまりさのお家だよと答える。 それが通じたと言えるのかは分からないが 十分近くも様々な言い方で俺等はゆっくりに出て行くよう勧告した。 だがとうとう怒った大きなゆっくりまりさが一言何か叫んだと思うと 一番下の、当時まだ小学生だった弟に体当たりし始めた。 それを見て父親は慌ててゆっくりまりさを蹴りつけた。 どうでもいい事だが、父親は車を用いてレストランまで行くよう 母にせがまれたため酒が飲めなくてイラついてた。 父は子供に悪影響を与える事無くこの問題にケリを付けるきっかけが欲しかったに違いない。 ちなみに体当たりを受けた弟は平然と立っていた。 これもまたどうでもいい話だがゆっくりが居間を汚した事で 弟は驚くより先に腹を立てた事だろう。 何故なら弟は焼きそばが好物だったし、ゲーム機があるのも居間だった。 弟は俺と数日前に買ったばかりの二人で遊べるアクション系のゲームで 早く遊びたくてうずうずしていたのだ。 弟はこの生物を無力だと判断し、持ち前の積極性から 窓を開けて小さなゆっくりまりさを二匹掴むと まるで授業中に消しゴムのカスを同級生の後頭部に投げつけるように 気軽に外に向けて投げ捨て始めた。 それを見て父親も動き出した 蹴られて泣いている大きなゆっくりまりさの長く掴みやすい髪の毛を掴むと 弟のように投げ捨てるのは肩を痛めるかも、と思ったのか玄関まで行って放り捨てた。 母は動かなかったので俺が残った大きな赤カチューシャと 小さい赤カチューシャを捕まえて父親を追って門の外につまみ出した。 この時大きな方の赤カチューシャがゆっくり特有の言葉なのか 「いなかもの」だの「とかいはじゃない」等と連呼していたが未だに意味が分からない。 喚く五匹を外に捨てて玄関をしめ、居間に戻ると 真っ赤な顔をした母が箒とチリトリを持って階段から降りて来たところだった。 昔から母の顔が赤いのは爆発寸前の合図だった。 ゆっくりばかり見ていたから忘れていたが 母は弟とは比べ物にならないぐらい腹を立てている。 楽しみにしている九時からのドラマが始まってもう二十分も過ぎていたのに グダグダと下らない問答を続けていたからだ。そもそも車の中で既にイライラしていた。 それにも関わらず掃除を手伝う気が無さそうに 冷蔵庫からビールを取り出す父に限界を迎えつつあるのだろう。 この時弟はゲーム機の電源をつけた。 俺は母の機嫌を取るためにも手伝うと告げて箒を一つ貸して貰った。 二人でやればこのぐらいすぐだ。 その時 バン!バン!と外からけたたましくプラスチック製の門が鳴るのが聞こえた。 私達の家の門がこんな音を立てた事は今までで二度だけだった。 酔っ払った父が門の前で派手に転んだ時が一度目、 家の前で俺とサッカーボールで遊んでいた弟が誤って 門の方にボールを蹴り飛ばした時が二度目、 記念すべき三度目がゆっくりの体当たり。 まずいと思った。 窓からそれを見た母はヒステリックに床を踏み鳴らしながら 箒を持ったまま外に飛び出して行った。 門が開く音とほとんど同時にさっき聞いたのと同じ類の悲鳴が門の方から聞こえた。 母はあいつ等を殺すかも知れない。 いつか酔っ払った父と口論になった母が同じようにヒステリーを起こして 座っている父の頭に向かって4kgぐらいあるパーティー用のサラダ皿を 振り降ろそうとしたのを止めた時を思い出した。 母を止めるために慌てて外に出た俺が目にしたモノは 眼球のあった場所に箒の柄を突き立てられ転げ回るゆっくりまりさの姿だった。 俺はゆっくりが可哀想と言う感想を述べるより先に こんな夜中に団地中に響きわたりそうな悲鳴を出させているのが 自分の母親だと言うことが問題だと思った。 このままでは近所でよろしくない噂が立つ事だろう。 母に団地での立場を無くさないでほしい。 そう思って母を羽交い締めにして家へと戻そうとしたが手遅れだった。 騒ぎを聞きつけた向かいの○○さん家の奥さんが玄関から出て来たのだ。 目をカッと見開き口に手を当てて驚いている。 母を急いで家に戻したが○○さんはしっかり見ただろう。 どうせ母は話せる状態じゃないだろうし、俺が出来る限りの言い訳をするしかない。 何しろ小動物の眼球を箒で掃除するのを見られたのだ。 半端な言い訳じゃ通じないとは分かっていた。 だが結局俺は話も嘘も下手くそだったのでほとんど本当の事を話してしまった。 (ちなみにこの時ゆっくり達はどこかへ跳ねていった) ○○さんは母の加入している仲良し主婦連盟の一員であり 主婦の多くが噂好きなのと同様に誰かの噂話が大好きな中年女性だ。 この手の中年女性の中には大抵聞いた話にプラスαを加えてから広める癖を持ち どこかの夫婦が喧嘩した事実が離婚したかもという話に変わっていたら 影でこのタイプの女性が動いていると考えて良い。 だが不幸中の幸いだったのは○○さんは噂好きだったが そのプラスαタイプの女性じゃなかった事。 幸運な事に少なくとも母の周りには事実は改竄される事無く伝わった。 (勿論伝わらない方が良かったに決まっているが) そして母は仲良し連盟から『異常なレベルのゆっくり嫌い』と認識された。 でもそれは間違っている。母はドラマを見るのを邪魔する生物が大嫌いなだけだ。 それから仲良し主婦連盟の内の一人は母の『嫌い』の範囲は犬にまで及ぶと思ったのか 犬の散歩の際に母と会った時は母から犬を出来る限り距離を置かせ警戒していた。 当然かも知れない。例え偶然刺さったとしても 小動物の目をエグるような人間は問題有りと見なされる。 この頃は母が友達の家に行く機会は減ったし、友達が家に来るのも減ったように思えた。 それからの暫くの間、家では母の気に障る事を恐れて テレビでゆっくりが出たらさりげなくチャンネルを回していたし 新聞記事にゆっくりが出ても話題には上げなかった。 父もそうしていたし勿論俺だってそうしていた。弟は知らない。 だが、母の友人が置いた距離はそれからの数週間でまた元通り縮まった。 ゆっくりまりさ達が俺達の家から追い出された次の日の夕方 中学校から帰る途中に小学生が3、4人輪になってしゃがんでるのが見えた。 輪の中心から「まりしゃはまりしゃだよ」と声が聞こえてきてから分かった事だが 輪の中にあの忌々しいゆっくりまりさがいるのだろう。 俺はゆっくりに対していいイメージを持てなかったが(なにしろ第一印象がアレだ) 人によっては可愛く見えるのだろう。例え生首のような姿でも。 その小さなゆっくりまりさは俺を見ると口を結んで膨らんだように見えた。 俺はその時初めてこのゆっくりまりさが昨晩のゆっくりと同じだと分かった。 後で友人に教えてもらった事だが膨らむのは家を追い出した俺への威嚇だったらしい。 ここにいたらコイツは俺が家族の目をエグった等と変な誤解を招くような事を言いかねない。 俺は足早にその場所を立ち去った。 その後家の近くで母の仲良し連盟の一員であるお婆さんが俺に話しかけて来た。 この若い人間と喋るのが大好きなお婆さんと三分程お話をしたところ やはり話の中にゆっくりに関する話が出て来た。 俺の家で起きた事件については残念ながらお話し出来なかったが、 突然町に住み始めたゆっくり達は退屈な団地でのいい話題となる。 お婆さんは昼間の間赤いリボンのゆっくりが庭の花を食べていたのを見たが 特に手入れをしてる庭でもないので放っておいたと言う。 俺はお婆さんにそいつはその内家に入ってきて お爺さんの位牌にお供えした焼そばを食い散らかしますよ、 と言いたかったが適当な所で話を切り上げて家に帰った。 ゆっくり達を町で見かけるようになってから暫くはいつもと変わりなかった。 さっきの小学生のように面白がって学校の帰りに鞄に隠していた飴を上げる子もいたし 庭で草を食べていても大抵放っておかれてた。 暫くの間はゆっくり達にとってこの辺は楽園だったに違いない。 それから二週間程経ってゆっくり達を見る頻度はまた少し多くなった。 また山から下りて来たのかと思ったが、 小さなゆっくりが多い事から恐らく子供を産んだのだろう。 ゆっくり達はもうこの辺には慣れたというように 道の隅で這うように歩いていたゆっくり達は道の真ん中を跳ね出し、 小学校の通学路に数匹で飴を貰うために集まっているのを毎日見かけた。 だがゆっくり達はここに住む上で守るべき人間のルールを理解する程賢くなかった。 ある日母親が自治会館での集会から帰って来て言う事には ゆっくりが○○さんの庭にある草花を食べた事が問題になったらしい。 彼女はゆっくりが草花を好んで食べる事を知らなかったのだ。 それを聞いた時俺は庭の草花を食べられるぐらいで問題になったの?と疑問に思ったが ○○さんと言えばガーデニングを趣味に持つオバさんと言う事を思い出して納得した。 おそらく泣きそうになりながら戸締まりに注意するよう皆に呼びかけたのだろう。 庭の無い俺の家には関係無い事だけど 通学路から見られるあの小さくも綺麗な庭から花が消えたのを想像すると 俺はゆっくりの事がまた少し憎くなった。 翌朝俺は登校中に○○さんの庭の様子を見たが(この家には塀も門もなく庭はむき出しだ) 少し高い所にある花は前と変わらなかったが地面の草花はもう全然無かった。 その代わりに庭では赤いカチューシャが二匹寄り添って寝ていた。 ○○さんは一人暮らしだし気が弱くて誰かさんみたいに 小動物の眼球をエグれそうな人じゃない。追い出せなかったのかもしれない。 でも追い出してもゆっくりまりさ家族のように戻ってくるんだろうな。 この前に家に来た赤カチューシャと似てるけど俺にはゆっくりの顔の区別はつかない。 いつまでも見てて遅刻するのも嫌なので放っておいた。 中学校への坂を上っているとまたゆっくりがいた。 今度はゆっくりまりさ、赤カチューシャ、赤リボンの三種類それぞれ一匹づつだ。 驚いた事に三匹並んで車道の真ん中を跳ねている。 この車道は交通量は大した事は無いが制限速度50kmと標識が教える危険な道路であり あんなノロい生物が見通しの悪い頂上付近で 並んで跳ねてたら轢いてくれと言ってるのと同じだ。 「ひろくてゆっくりできるね」等と言ってる場合じゃない、 そう奴等に注意しようと小走りに近づいたその時 直管マフラーのとんでもない騒音バイクが二台坂の下から上がってくるのが聞こえた。 アレは中学に上がってからたまに見るようになった高校生達だ。 この辺じゃ最も関わり合いになりたくない類いの人間である事は 乱れた服装とバイクのステッカーから判断出来る。 珍しく朝早くからの登校なんですね等とは言えないが このままだとあのゆっくり達に躓いて転倒しかねない。 だけど俺は声を張り上げて注意する事はしなかった。怖いから。 ゆっくり達は向かって来る赤と緑のバイクに向かって いつかのゆっくりまりさのようにぷくーっと膨れだした。 あの状況で威嚇とは信じられない行動だがゆっくりなりの最大の防衛手段なのだろう。 高校生達もやっとゆっくりに気がついたのかスピードの乗ったバイクに ブレーキをかけながらゆっくりを避けようとしたが 横に並んで大きく膨れるゆっくりを避ける事が出来ず その内の一匹を轢いてバランスを崩し転倒した。 改造された赤いバイクがガリガリと音を立ててアスファルトに削られていく。 二人のうち一人は無事だったが、 転んだ方は腕を怪我したらしく血を滴らせながら呻いていた。 (この時俺は事故の現場を目撃した事よりアスファルトに花が咲くように広がった ゆっくりの中身を見て、あぁ、本当に餡子で出来てるんだな、とちょっと感動していた) 転んだ時にはもうそれほどのスピードは出ていなかったし大袈裟な怪我じゃない、 救急車を呼ぶなら仲間が呼ぶだろうなと思い、俺はそのまま歩き出した。 直ぐに後ろから絶叫が聴こえたので振り向いたら 緑のバイクを端に停めた太った男がゆっくりを蹴り殺していた。 そんな事より救急車を呼ぶべきですと思ったが、怖いのでやっぱり黙っていた。 当然の事ながらこの事件は直ぐに問題となった。 山から下りて来たゆっくりは交通ルールなんて知らないので狭い道と広い道があったら 当然のように後者を選ぶ。しかも迫って来る車を避けたりしない。 ブレーキが間に合えば威嚇が成功したと勘違いして車道を跳ねる事を止めず、 間に合わなければ潰れて死ぬだけだからだ。 この二点の問題からああいった事件はその後も起こった。 これからは車を運転している時にゆっくりが前にいたら必ず停車して ゆっくりを車道から摘み出さなくてはならない、と夜に父が愚痴っていた。 父は一度その機会に遭遇した時にクラクションを鳴らすことで ゆっくりをどけられないかと考え、実行したが より一層大きく膨れただけだったと言う。変なところで勇敢な生物だ。 ゆっくりはこの辺一帯のドライバーを敵に回したのかも知れない。 この事件を境に段々と町のゆっくりに対する空気が変わり始めた。 翌朝庭を荒らされた○○さんの庭を通り過ぎると 昨日のヤツかは分からないけど大きな赤カチューシャと小さな赤カチューシャが 今度は通学路に飾ってある児童会の子供が植えた花を食べていた。 まだ朝早いとは言え、何人もの生徒がこの二匹を見た筈なのに 誰も止めるように話しかけなかったのだろうか? これを止めるのはゆっくりが生きる為に草花を食うのを否定する事になるが 草花なんてここじゃなくてもその辺にある。とりあえずこの花は食べさせちゃ駄目だ。 オイ、それを食べると人間にとってもお前等にとっても不都合なことが起きるので お前達はあっちの雑草を食べなさい 「なにいってるのおにいさん?くさをたべるなんてとかいはじゃないわ!」 俺はあの夜の下らない問答を繰りかえす事になりそうな気がしたので 無言でこの二匹を摘まみ上げて、まず最初に重い方から道路に放り投げた。 少し痛い目に会えば家に入ったゆっくりみたいに退いてくれるだろう、そう思った次の瞬間 「ごのいながも」ブレーキの間に合わない軽自動車が赤カチューシャを轢き殺した。 俺は車に轢き殺させる為に赤カチューシャを投げたわけじゃない。 小さな方の赤カチューシャは力を無くした左手からぽろりと落ちると 轢き潰された大きな赤カチューシャにふらふらと近づいていった。 俺は車に向かってそのまま通り過ぎていってくれと願い、 足を震わせながらドクドク鳴る胸を押さえ付けていた。 しかし完全に停車し、運転席のドアが開くのを見た俺は怒られるのが怖くなり 通学路とは全く関係のない階段の道に向かって逃げ出した。 この時俺は赤カチューシャの命を奪った事の罪悪感よりも、ずっと、 大人にちょっと怒られる程度の事の恐怖を強く感じていた。 思えばこの事件を通して俺は自分がゆっくりの命について どのように思っているか認識出来たのかもしれない。 毎日どこかで同じような悲鳴を聞いてるうちに流石に慣れたのか、 奴等が所詮饅頭であり、人ではないと分かったからなのか、 言葉は話せるが会話が成り立たない事が多々あるせいなのか、 それとも迷惑な事ばかりする癖に道でデカイ顔して膨れるのが気に食わないのか どれでもいいがそれからと言うものの 俺は町の何処かでゆっくりの悲鳴を聞いても何とも思わなくなったし、 うっかり踏みつぶしても大して罪悪感を感じなくなった。 その日の友人達との帰り道でゆっくりの死体が転がってるのを見つけた。 友人が言うにはゆっくりに通せんぼされたドライバーの中には ゆっくりをどける際に誰も見てなければゆっくりを殺してしまう人も出て来たらしい。 何度も邪魔されれば殺してやりたくもなるかもしれない。 なにしろ脆弱な生物である事は昨日の太った男がゆっくりを 簡単に蹴り殺したのを見てたので知ってる。 右脚を上げて全力で降ろすだけのアクションで殺す事が出来るだろう。 路上にゆっくりの死体があっても友人は驚かなかったが、最近多くて慣れたと言っていた。 家に帰ると暫く顔を見なかった母の友人が三人遊びに来ていた。 その中にはあの夜の母の醜態を見た○○さんもいたが ○○さんの家じゃゆっくりに車のボンネットの上を汚されたらしく、 ゆっくりの話で盛り上がってるようだ。主にゆっくりに対する文句で。 被害者意識を通じて(あの夜の被害者がどっちだったのかは人の判断によるが) 母が友人達とまた元通りの距離感を取り戻す事が出来たのは俺にとっても喜ばしい事だ。 どうやら話にプラスαを加えるのは母だったらしく、皿は二十枚割られた事にしていた。 そんな生活がまた暫く続いて、この町でのゆっくりの暮らしは4週間前とは随分変わり、 ゆっくりに対する人々の態度は段々と冷淡なモノになっていった。 草だけでなく花を食うと知り、庭に入って来たゆっくりを殺す人もいるそうだし、 俺の家のように家に入り込まれた人もやっぱり出て来た。 この辺はそうでもないが少し離れた所では騒音公害も問題になっている。 その上で更に町のゆっくりにとって不都合な事件が起きた。 この事件はゆっくりが絶対に敵に回してはならない子供達と、PTAを敵に回すきっかけとなった。 ゆっくりが小学生の女の子に怪我をさせた事件だ。 ある日の夕方、いつもと同じようにゆっくり達は飴を貰うため女の子を待っていた。 飴を貰えると知って待っているゆっくり達の数は7匹もいたらしい。 飴をくれるのはこの女の子しかいない為頑張って待っていたのだろう。 ゆっくり達が集まる場所の近くに住む友人が言うには ゆっくりは女の子から飴を貰うため一時間も二時間も待ち続けていたらしい。 女の子の姿を見るとゆっくり達は一斉に女の子に集まっていった。 だが、その日女の子は飴の袋を持っていなかった。先生に見つかって没収されていたのだ。 女の子から飴を貰えないと聞いたゆっくりはガッカリしてどこかに帰っていった。 だが帰らないゆっくりがいた。 人間と同様に、ゆっくりの中にも自分中心的な性格を持つゆっくりがいる。 帰らないゆっくりは自己中心的で大きな体格を持つゆっくりまりさだった。 ごめんね、と謝って背を向けた女の子の背中に向かって そのゆっくりまりさは体当たりをした。 前のめりになって倒れ、地面に手をついた女の子は産まれて初めて捻挫という怪我をした。 これでゆっくりは飴さえ貰えなかったもののいくらか気分よく帰れる事だろう。 だがゆっくりにとって都合の悪い事は その女の子は優しくて可愛いクラスの人気者だった事と、 その日は三者面談で女の子は親と一緒に帰っていた事だ。 ついでに人間は人間に怪我をさせたその個体だけを危険視することは無いと言う事。 それからというものゆっくりの姿は減ったように思えた。 女の子の親が駆除申請したのかどうかは知らないが通学路のゆっくりの死体は確実に増えた。 勿論保健所は殺して放置なんてマネはしない。町の人間の仕業だ。 例えば今友人が跨いだ赤いカチューシャのゆっくりだったモノは 汚れ具合から散々蹴られた挙げ句に道の真ん中でさらし者になった事が分かる。 多分小学生だろうな、と思った。 子供達はゆっくりの事を女の子を後ろから攻撃するような生き物だと認識し、 攻撃する事の正当性を得たつもりなのかもしれない。 例えそんな汚い事をするのがあの一匹だけだったとしてもだ。 後ろから来る小学生が今度は赤いリボンのゆっくりを石蹴りの石代わりにしているが 俺も友人もそれを止める事は無かった。 何故ならそもそも俺はゆっくりが好きじゃないし この生き物は町にとって害になる事が分かった。 自分から遊び殺す気にはならないが、 小学生がそれをするのを止める気には全くならない。 きっと友人も俺と近い考えを持っていると思う。 ゴキブリを殺すのと一緒だ あんなの、と。 ゆっくりが家に侵入してきた事件が終わってから丁度5週間経った晴れた休日の朝 ニコニコと機嫌良くコーヒーを入れてくれる母に 溜まったダンボールごみを外に出しておくように頼まれた。 父が酒に酔わず母が上機嫌、ついでに弟が大人しくしてれば家族は幸せだ。 俺はそれを承諾し、玄関にあったダンボールを紐でまとめると 両手にそれらを抱えて門を出た。 門を出てすぐに半ズボンから剥き出しになったふくらはぎに何かがぶつかるのが分かった。 金髪に赤カチューシャ。 きっと俺に親を奪われたゆっくりか、最初に家に侵入してきたゆっくりのどちらかだろう。 みゃみゃにょかちゃきーとかしきりに鳴いていたが意味が分からない。 俺はコレを母が見てあの夜を思い出してまた機嫌が悪くならないように、 スニーカーの底が汚れないように、 抱えていた片方のダンボールを赤いカチューシャに乗せてその上から足で踏み潰した。 車を運転する大人達はゆっくり達を刺し殺す為の細長い棒を 助手席に用意してから運転する人の方が多くなったし、 家の近くをうろつくゆっくりは問題を起こす前に処分される。 特に通学路付近では暫くの間子供達の安全の為、 トングと麻袋を持った父母会の会員が巡回していた。 町は人間のルールを守れなかったゆっくりに対して冷たくなり、 人はゆっくりを踏み潰しても大して心を痛めなくなった。 ゆっくりはこの町じゃ嫌われ者。それが当然になった。
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ゆっくり川渡りパズル ほとんどが会話文で構成されています。読みにくさは抜群です。 多少人間いじめも入っています。 全体的にぬるめです。 色々と実験作です。SSとは別の、なんか変なものだと思ってお読み下さると幸いです。 「なあ、ちょっとこれ見てくれ」 「ん? 何だこれ、『ゆっくりパズル・ゲームブック』?」 「ああ。なぞなぞとか論理パズルとかに、ゆっくりを絡めた問題が載ってるんだよ。 それでさ、中でも面白かったのがこれ。『ゆっくり川渡り』だ」 「川渡り? 何それ?」 「まあ、今から問題読み上げるから、ちょっと聞いててくれ」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 広い原っぱを、ふらん、れみりゃ、親まりさ、子まりさ×2、親ありす、子ありす×2が跳ねています。 一行はとある事情で、ずっと向こうにあるというゆっくりプレイスにたどり着くために移動しているのです。 そんな時、一行の前に川が現れました。川幅が広く、流れもそこそこ急なので、まりさの帽子では渡れません。 岸には舟が括りつけられていました。しかし舟はゆっくり二匹までしか乗れず、一艘しかありません。 つまり、この舟一艘だけを使って、こっち岸と向こう岸を行ったり来たりしなければならないのです。 「うー。こまった。ぜんいん、わたれるのかな......」 一行を率いていたふらんは頭を抱えました。 何故かというと、舟をこげるのはふらん、親まりさ、親ありすの3匹だけ。 れみりゃと子ゆっくり4匹は、このいずれかの3匹と同乗して渡らなければならないのです。 さらに、加えて―― 「んほっ......まりさ、さきにいってもいいわよ! とかいはなありすは、あとからゆっくりいくわぁ!」 親ありすが発情して、レイパーとなりかけていました。 ギラギラとした視線の先には、縮こまって震えている子まりさ2匹がいます。 「ゆっ! まりさはあとでいいよ! それより、ありすがそこのおちびちゃんをおいてさきにいってね!」 そんな親ありすから子まりさ達を隠すようにして立っているのが、親まりさです。 噛みつくような視線を親ありすに、そして子ありす2匹に向けています。 そのおかげで、親ありすは子まりさ達に手を出すことができません。 普通のまりさより体が大きく、力も強い親まりさは、レイパーと化した親ありすとも互角に張り合えます。 親まりさは、親ありすさえ居なければ、レイパーとなる恐れがある子ありすを噛み殺す気でいるようです。 ちなみに、親ありすは自分の子どもに手を出すつもりはさすがに無いようです。 最後に、もう一つだけ懸念がありました。 「うっうー! あまあまたべるんだどー♪」 「ゆぎゃああああ!! れみりゃいやあああ!!」 れみりゃの存在です。放っておけば、間違いなくまりさやありすを食べてしまうでしょう。 「......だめ。えい」 「う゛あっ! いだいんだどー! ざぐやー、ざぐやあああ!!」 唯一、ふらんだけがれみりゃを抑えておけます。一緒の岸にいれば、れみりゃは悪さをすることはありません。 しかし、ふらんはれみりゃを抑えるだけで精一杯で、まりさとありすの睨み合いまで止めることはできません。 「おかーしゃん......こわいかおちないで、ゆっくちしてね......?」 「みゃみゃ......すっきりーはだめだよ......」 子まりさ2匹と子ありす2匹は何も悪さをしません。子ありすがレイパー化することもありません。 状況は以上です。 あなたはふらんとなって、1匹も欠くことなく、向こう岸に全員渡れるように順番を考えてください。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「長いわ! えーと、親まりさが......?」 「まとめるとだな...... 舟は2人乗りが一艘。舟をこげるのはふらん、親ありす、親まりさだけ。 どちらかの岸に、安全条件を満たさないメンバーが揃っていたらゲームオーバー。 親まりさは親ありすが居なかったら子ありすを食う。 親ありすは親まりさが居なかったら子まりさを犯る。 れみりゃはふらんが居なかったら親とか子とか関係なくまりさやありすを食う」 「あっさり済んだじゃん! 最初からそれでいいよ!」 「まあまあ。それで、できるか? これ」 「簡単だろこんなん。まずは......親まりさと子まりさ1匹で向こう岸に渡る」 「ゆっ! まりさと、おちびちゃんひとりでいけばいいんだね!」 「ゆっくちいってくるよ!」 「んほおおおお! まりさののこったおちびちゃん! ありすのあいをうけとってねええ!!」 「やじゃあああ! やべでええええ!!」 「もうありすをとめられるのはだれもいないわあああ!」 「ゆぎゃあああ! だずげで、おがーじゃーん!!」 「んほおおお! すっきりー!」 「いやあああ!!......ずっぎりー...... もっちょ......ゆっくちちたかった......」 「うー。まちがった......」 「あれー?」 「あれー、じゃねーよ! お前俺の話聞いてた? 何なの? 餡子脳なの? 親まりさが居なくなったら残された子まりさ一発でアウトだろうが!」 「はは、ちょっと試してみただけさ。次から本気だ。 よし、ひらめいたぞ! 親まりさと親ありすで仲良く向こう岸に! そして親まりさだけでこっち岸に帰ってくるんだ!」 「じゃあ、まりさはありすといっしょにいくよ......」 「ゆふう、ふたりきりね、まりさ!」 「こっちこないでね!」 「じゃ、まりさはもどるよ! おとなしくしててね!」 「つれないわね......」 「ゆぴいいい!! みゃみゃ、たずげでえええ!!」 「くぞありすのおちびちゃんはゆっくりしないでしんでね!」 「どぼじでえええ! いじゃいよおおお!!」 「もっじょ、ゆっぐぢ、ぢだがっだ......」 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「うー。まちがった......」 「あれー?」 「だからあれー、じゃねーんだよ! 戻ってくるときの事も考えようね! 向こう岸に行った奴はもうこっち岸には居ないんだよ!」 「え、でもじゃあこれ、どうすんだ? もう動かせる奴が......」 「居るだろ......大ヒントだ。まず、ふらんとれみりゃで向こう岸に行って、ふらんが帰ってくる」 「うー。れみりゃ、いくよ」 「うあー! れみりゃのあまあまがああ!! はなじでー!」 「じゃ、ふらんはもどるから」 「いやあああ!! ざびじいよー! ざぐや、ざぐやあああ!!」 「んほぉ......まりさ、ありすとあいをかわしましょう......?」 「だからこっちこないでね!」 「うー。まずは、ここまで」 「はい。これで、向こう岸にれみりゃが1匹だけ」 「おおー......そうか、そして親まりさを......あれ?」 「......それじゃさっきと同じだ。こっちにはふらんが居るんだぜ?」 「あっ、そうか! ふらんと、子まりさ1匹が一緒に行く! そしてふらんだけ帰ってくる!」 「うー。子まりさ、いくよ」 「ゆっ! わかったよ!」 「ふらん、まりさのおちびちゃんをよろしくね!」 「うー。じゃあ、ふらんはもどるから」 「ゆ!? まって! ふらん! このままじゃまりしゃが......」 「うぁー! ふらんがあまあまをもっできでくれたどー♪ いただきまーす!」 「ゆぎゃあああ!! だずげでえええ!」 「うー♪ あまくておいしいどー!」 「もっちょ......ゆっくちちたかっ......」 「ふらあああん!! なにやっでるのぼおおおお!! ばりざのおちびちゃんがあああ!」 「うー。まちがった......」 「......あれ?」 「だから! お前は! 何で? 何でなの? お前の頭はダメだ!」 「うるせー! じゃあこうだ! 親まりさが子まりさを口に含んで......」 「いやいや何言ってんだよ! お前は、もう......本当にダメだ!」 「うるせーよ! 大体定員ゆっくり2匹までって何だよ! 親と子じゃ重さも大きさも全然違うじゃん! そもそもふらんやれみりゃが胴付きかどうか、とかいう情報もないし! どうなのそこんところ?」 「これはクイズだから! そんなこと言ってたら進まないよ! ふらんと子ども1匹までは合ってるんだよ。その次だ、その次!」 「えー......? はっ! わかった! ふらんとれみりゃで帰ってくるんだ!」 「れみりゃ、ふらんといっしょにもどるよ。子まりさはここでまってて」 「うー! れみりゃのあまあまがー!」 「わかっちゃよ! ゆっくちまっちぇるよ!」 「うぁー♪ こっちにもあまあま......いだっ! うぁー、いだいいい!!」 「うー。おとなしくしてろ......ここまで、よし」 「はい正解! ようやく気付いたな」 「よっしゃー!......って、めんどくせーよ! 子まりさ1匹向こうに運ぶのにどんだけ時間掛かるんだよ!」 「お前の解答が支離滅裂だからだ! これからスピード上げてくからな」 「尻滅裂って......ちくしょう、意地でも解いてやる......」 「今は向こうに子まりさ1匹のみ。次は?」 「んーと、とりあえず舟がこげない子ども達を向こうにやるべきだよな。 次は、親まりさともう1匹の子まりさで向こう岸に。そして親まりさだけ帰ってくる」 「おお、続けて」 「で、親ありすと子ありす......じゃだめだな。向こうで子まりさが犯られる。 親まりさと親ありすが一緒に行って、親ありすだけ帰ってくる!」 「おお! 今は向こうに親まりさと子まりさ2匹! それで?」 「親ありすと子ありす1匹が一緒に行って......親まりさと親ありすで帰ってくる!」 「......、で?」 「そして親ありすともう1匹の子ありすが一緒に行ってッ――」 「んほおおおお!! まりさのおちびちゃんたちぃ! ありすといっしょにすっきりしましょうねえええ!」 「ゆぎゃああああ!! おかーしゃんどこおおおお!!」 「まりさははんたいがわよおおお! んほおおお! きょうはさんぴーよおおお!!」 「いやああああああ!!」 「みゃみゃ、やめて! まりしゃたちにひどいことしないで!」 「ゆふうん! ありすのおちびちゃんたちもいっしょにすっきりしましょおお! きょうはごぴーよおお!!」 『ゆんやああああ!!』 「アァァァウトオォォォ!」 「ギャアアアアア!! 同じ過ちをおおおお!!」 「しかも犠牲者が増えてるな。まあ、ゲームオーバーには変わりないけど」 「え、でも、もうわからん。どうすればいい? いつ間違った?」 「親ありすと子ありす1匹目を持ってったときだな。まだ子ありすは早い」 「向こう岸に親まりさと子まりさ2匹が居るときか...... あと、こっち岸で動かせる奴と言ったら......」 「そう。ふらんとれみりゃだ」 「ふらんとれみりゃで向こう岸行って......親まりさで戻ってくるんだ!」 「うー。れみりゃ、またいくよ」 「うぁー! はやぐあまあまたべざじでー!」 「じゃあ、親まりさは、ひとりでもどって」 「ゆっ! わかったよ! おちびちゃんたちをおねがいね!」 「うぁー、あまあまああ!!」 「んほっ......まりさ、もどってきてくれたのねえええええ!!」 「しつこいよっ!」 「ゆべっ! ゆふふ、まりさったらつんでれねぇ......」 「正解! これでこっち岸には親まりさ、親ありす、子ありす2匹。向こう岸にはふらん、れみりゃ、子まりさ2匹」 「条件は大丈夫なんだな。すげぇ、なんかすげぇぞ」 「終盤だ。一気に行ってみよう」 「親まりさと親ありすで行って、親ありすで帰ってくる!」 「ふんふん」 「親ありすと子ありすで行く!」 「よしよし」 「これで残りは子ありす1匹のみ!」 「その通り! さあ、とどめだ!」 「ふらんが単独で迎えに行って、子ありすを拾ってくればッ――」 「うー。じゃあ、さいごの子ありすをむかえにいってくる」 「いってらっしゃい! たのんだわよ!」 「これでゆっくりぷれいすにいけるね!」 「そうね! まりさ、ついたら、いっぱいすっきりしましょうね!」 「ゆぅ!? なにいってるの!? れいぱーはちかよらないでね!」 「......うー☆」 『!?』 「よーやく......よーやくあまあまがたべられるんだどー☆」 「ゆぎゃああああ!!」 「ふらん! ゆっくりしないでかえってぎでええええ!!」 「あまあまはおぜうさまにたべられるんだっどぉー! こうえいにおもうんだどー!」 「だずげでえええええ!!」 「じにだぐないよおおおお!!」 「あ゛あ゛あ゛あ......あんこざんずわないでえぇぇ......」 「ゆわあああっあああっああぁぁぁぁ......ぼっどゆっぐぢ......」 「れみ☆りゃ☆うー♪」 「ユギャアアアアアア!! 最後の最後でえええぇぇえ!!」 「横着野郎!! 何でれみりゃ放っといて行くんだよ!」 「わずれでばじだああああ!!」 「ホンットに......ダメだ! リアル餡子脳だお前は!」 「ずびばぜんんんん!!」 「ふらんとれみりゃで戻る! れみりゃ1匹を置いて、ふらんと子ありすで向こう岸へ! で、そこでふらんが単独で戻ってれみりゃを拾ってくるんだよ! わかったか!」 「......はい、わかりました」 「はぁー......きれいに終わるかと思ったのに......」 「......なあ、1つ思ったんだけどさ」 「何だ」 「れみりゃとふらんって空飛べるよね......?」 「......それは俺も思ったけど、突っ込んではだめだ」 「そうですか」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 解答ページの下に書いてある、おまけ 「ゆっ! これでゆっくりぷれいすにいけるね!」 「おかーしゃん、いっぱいゆっくちしようね!」 「うー。ついた」 「ゆっ! ここがゆっくりぷれいすね! とかいはなたてものだわ!」 「おにーさん。かえってきたよ」 「おう、ふらん、お帰り。 おっ、すげー! れみりゃ捕まえてきたのか! やるなあ。さすがふらんだ」 「ゆっ? このおにーしゃんだれ? ゆっくちできるひと?」 「ああ、俺はとってもゆっくりできるお兄さんだよ。 そしてみんな、とってもゆっくりできる加工場にようこそ」 『ゆ゛っ!?』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき 部屋の整理中に俺が幼かった頃読んでいた本が出てきて、その内容で作ってしまいました...... こんな粗雑で分かりにくくて読みにくい作文を最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。 参考文献 「パスワード龍伝説」 松原秀行 講談社青い鳥文庫 過去作品 ゆっくりバルーンオブジェ 暗闇の誕生 ゆっくりアスパラかかし 掃除機 野菜の生え方について本気出して叩き込んでみた 前 後 おまけ ゆっくりドライ火だるま ゆっくり真空パック
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幻想郷。 失われた自然といまだ人が共存する地。 大地の恵み、川の恵み、風と雨に立ち向かい、その猛威を畏れ、恩恵に感謝する。 自然と対峙し、ときに糧を得るべく狩り、または育む。 人が自然の中に生きるために狩るもの…それは、ゆっくりと呼ばれる存在であった。 この村には風変わりな家がある。この家には一人の男が住んでいる。 村の規模はまだ小さく、発展の途上にあることが十分に伺える。頑丈な、これだけはまずしっかりと拵えた柵の内に村人は家を建て畑を耕し、しかし、この男と幾人かの村人は農民の生活に合わせず、 朝は遅くまでベッドの上、夜はいつ帰るともしれず、それでいて男を見る村人の眼はいつも尊敬の念にあふれていた。 そんな男の家は村の中心にあり、村長の家をしのぐ大きさを誇る。ただ、その形が異様だ。大きな台形のような外見で、二階には大きな窓が二つ、屋根は真っ黒に塗られ、天井は高く尖り、家の後ろには波打った藁のようなものが垂れていて、 近くで見るとつるつるとした壁肌が、村からゆっくり離れて、段々とその形が周辺の者なら誰でも見覚えある形にまとまって見えてくる。大きな、大きな、ゆっくりまりさの形に。 この男の家はゆっくりでできていた。 村の中で異彩を放つ、その家は庭のようにちょうど周囲を取り巻く柵を境に、ゆっくりを丸ごと家に改造したものなのだ。 かつて村を襲った脅威の一つ、10m級ドスまりさを剥製化して、職人を招き、住居として手を加えたもの。 あんぐりとあけっぱなした巨大な口には、すっぽりと豪奢な鉄のドアを嵌め込んで。 目の部分は二つの円窓を誂え。 皮は、樹脂とゆっくりの餡子を練りこんだ特製の油を塗りこみ、コンクリートのように硬化処理し。 風船のようにぷっくりと広げた内部は餡子を残らず抜き取って大黒柱と支柱を数本立て、床には絨毯を敷き詰め。 帽子と髪の毛も腐敗処理を施して屋根として利用してある。 この家はまさしく、「ゆっくりの家」だ。 そんな奇妙な家の内装もまた、あらゆるものがゆっくりで作られていた。 成体のゆっくり各種を背中から切り開き、餡子を抜いて代わりに綿を詰めて縫い合わせたゆっくり縫いぐるみ。 生きたままのゆっくりの頭部に穴をあけ、花の種を植えたゆっくり植木鉢。これはゆっゆっと掠れた声でぴょんぴょん跳ねながら、頭の花をゆらゆら揺らしている。 柱に打ち付けられたゆっくり時計。膨らんだ腹部に鳩時計と同じ仕掛けを施し、定時になると生まれたての赤ん坊ゆっくりがぽーんと転がり出てくる。 箪笥や、床に置いた道具箱などもゆっくりから拵えたものばかり。 なぜ、これほどにゆっくりにこだわるのか。男にしてみると、こだわるとかそういった問題ではなかった。ただ、生活に関わるあらゆるものが、ゆっくりであっただけで… この男の職業は、ゆっくりハンターだから。 人口は百足らず。時折訪れる行商人とのわずかな交易と狩りの成果に頼る小さな村は、つい最近の開拓によって作られた。 都市を出て郊外を離れ、ずっと森の中に分け入ったさらに先、自然の趣たっぷりな平野に新天地を求めた人々によって築かれた。 だが、そこは伝説でしか知られない不自然の脅威にさらされる地だったのだ。 大きな森や山に必ずいるという、生まれつきの素質をもつ個体が、強運と狡猾さで生き延びて、群れを支配するまでに巨大化した、ドスまりさ。 都では滅多に確認されない、ドス級の巨体に加え、鮮やかな桜色のリボンがトレードマークのれいむ種、リオれいむ。ドススパークに匹敵する火炎球を放つという。 姿かたちは元の種と変わらず、やや大きめの体に人間でも追跡できぬ異常な素早さと凶暴性を秘めた、ちぇんクック。さらに凶悪なちぇんガルルガなる種も噂に語られる。 遠目からでも、地響きと20mという巨体ゆえに目立つ、ティガれみりゃ。 それ自体が一つの山と数えられ、もはや災害そのものにまで増長し、都の防衛庁が対策を講じねばならぬという、ラオシャンみょん。 もはや伝承ですら語られることも稀な、 伝説に忘れ去られた古代の知識を身に着け、天を裂き山を揺るがし、自然現象を操る超常の種、ミラボレぱちゅ。 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………… 辺境の村はどこもゆっくりの脅威に晒された。ある村は蝗の様に襲いかかるゆっくりの大群に畑を食い尽くされ、ある村は見たこともない巨大なゆっくりに家を踏み潰され、村があった場所はもはやただの平原に変わったという。 ゆっくりを対処する手段が求められた。ゆっくりを研究し、ゆっくりにのみ通用する毒やゆっくりの本能を刺激して罠にかける方法が編み出された。だが、それだけでは足りなかった。 小さなゆっくりには人的手段が通用したが、災害に等しい巨大種には常人では対抗しきれない。 そうして立ち上がったのが、ゆっくり虐待派と呼ばれた青年たちだった。はじめ、彼ら彼女らは生き物を無残に遊び殺すと忌避された。しかし、ゆっくりを様々な方法で玩ぶうちに、虐待派はゆっくりのあらゆる特性を学んでいった。 彼ら彼女らはただゆっくりを殺害する手段だけではなく、生活に役立つ道具としてゆっくりを加工する手段も編み出していったのだ。 いつの間にか、森に棲むゆっくりを狩り、ゆっくりから武器や防具を加工して、仲間同士で連携して巨大種を倒す技を身につけた者を 「ゆっくりハンター」 と呼び、いまや開拓村、辺境の町ではなくてはならない存在となった。 ハンターには素質が必要だ。それはゆっくりを傷めつける虐待の精神がなにより重要とされる。 ゆっくりは極めて世代交代のサイクルが短い。また、個体自体の「進化」と他の生命体なら呼ばれるだろう環境への適応能力もまた著しく高いのが特徴である。 その最たる例が、『虐待などで過度のストレスを長期受け続けたゆっくりの餡子は非常に甘くなる』というものである。 これは殆どのゆっくりに当てはまる、環境への自己適応である。 ハンターはゆっくりを狩り殺すだけが能ではない。生業として成立するために、ゆっくりから様々な道具を作り出す知識を身につけている。ゆっくりにかける負荷の度合いや部位によって、硬度や弾力性に変化を持たせることで、 巨大種の皮や餡子、または眼球や舌などから衣服、調度品、薬品、そしてハンターがゆっくりを狩るための武具を作り出すのだ。 ゆっくりを狩る者にも色々いるが、(都では、身長を超えるような大きな玄能を嬉々として振り回す少女のハンターがいるともっぱらの噂だが)時には、胴体付きゆっくりを捕獲して調教ないし教育し、 ペットや使用人、あるいは狩りの手伝いをする助手として利用することもある。 この開拓村に、ゆっくりの家を造って暮らす男は、随一のハンターである。討伐、捕獲、採集、あらゆる依頼をこなし、かつてはラオシャンみょんの進行を阻止する要塞戦で勝利を収めたほどの猛者だ。 日が沈み、夜が訪れる頃。 男の家に客人が現れた。村長だ。曲がった腰を杖で支え、ドアをゆっくり叩いた時、男はちょうど食事の時間で、飼いゆっくり(ピンクと白の縞々帽子をかぶせたまりさ)を撫でながら、コックのれみりゃが作った小籠包を味わっていたところだった。 村長の用事はわかっていた。それは依頼だ。 「急ですまんがの。また森のほうでゆっくりがあらわれたそうじゃ。行商人が依頼を持ってきた。なんでも近く都のほうで新しい建設の計画があるそうじゃが、その付近で凶暴なゆっくりが群れをつくっとるそうじゃ。都から派遣されるハンターと共同で討伐してくれとの。」 男はそれだけ聞くと、口元の肉汁を拭い、膝の上のゆっくりを払い落して無言のまま、壁に掛けた武具を取り出し装着した。 彼が身につけるのは、かつてラオシャンみょんを討伐した際、剥ぎ取った表皮を乾燥させ、薬品に漬けこむことで銃弾の衝撃を吸収するほどの耐衝撃性をもたせたものを甲冑として鍛えた「暁丸」、 武器はラオシャンみょんの牙を削った太刀「楼観剣」である。 準備が整うと、村長が手配したゆっくり車(底部に車輪を取り付け、横長に変形した2m級のドスまりさ二体が牽引)に乗り、鞭を振るった。 ひぃっと小さく声を上げると、ドスまりさがゆっくりと移動を始めた。 地図に示された狩り場に辿り着くのは深夜。もっとも狩りに適した時間だ。それまで男は休息を取るべく目を閉じた。ハンターの習性ゆえに、男はすぐに眠りに落ちた。 目が覚めた時には、非情かつ冷酷なハンターがそこにはいるだろう… (続く) おはようとそしてこんにちは、それからこんばんは VXの人です。 どうしても書きたかった。後悔はしてはいけないと信じてる。シンジテル。 このSSに感想を付ける
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※チノレくさい ※虐待はあんまり無い ※リレーになると面白いような面白くないような ※色んな作者さんにごべんなさい ここはある大学のゆっくり学部虐待科の学生が集まって作られたゆ虐サークル。 サークル棟の一角にある、抜群の防音性を誇る、通常の部屋2つ分の空間のある一室がその活動場所だった。 このサークルがここまで優遇されている理由は1つ。 この大学が日本でも珍しい、ゆっくり研究に力を入れている大学だからである。 だからと言って、サークルまで厚遇する必要があるとも思えないのだが、そうなっているものはそうなっているのだから仕方ない。 「うぃ~、さびぃ・・・」 身を縮こまらせてサークル棟の階段を駆け上がる一人の女性。 彼女は仲間からはあねきィィ!と呼ばれている。断じて「あねき」ではない。 4階に到着したところで廊下を曲がり、いつも通っている部屋の扉をノックする。 「私だけどー」 「はいよー」 けだるそうな返事を聞いてから、ドアを開け、部屋に足を踏み入れる。 すると、昨日までは置かれていなかったはずのものがそこにあった。 「お、麻雀じゃん?」 「小杉が持って来たんだよ」 「あねきィィ!もやります?」 卓を囲んでいる4人ももちろんゆ虐サークルのメンバーである。 小杉と呼ばれた男性は難しい顔をして頭をかきむしりながら牌と睨めっこしている。 彼の隣で平和そうな笑顔を浮かべているのは数少ない女性サークルメンバーの公馬 紀乃、通称キノ子。 それから中国からの留学生の白 頭翁、またの名をムクさん。 そして、王者の威厳を漂わせて、悠然と構えているサークル棟清掃員のおっちゃんこと、大貫さん。 「後でやらせてもらうよ。で、いくら?」 「お金はかけねぇよ。赤ゆっくりを賭けてるんだ」 「何、負けたら公開ゆ虐でもさせられんの?」 「Exactly」 喋りながらもコートを脱ぎ、室内を見渡すあねきィィ! そこでようやく、自分の足元で一人の男性が体育座りをして落ち込んでいることに気がついた。 しかも、かなりいかつい男である。 「おわっ!?・・・なんだ、玉男か」 「うん、玉ちゃんだよ・・・」 「やべでえええええ!?」 体育座りのまま、ちょっとだけ涙目になりながら一匹の成体れいむを執拗にこねくり回している。 散々こねくり回され続けたらしく、れいむは既に完全な球体に近い形になっていた。 「何で落ち込んでる?」 「麻雀のルールがわからないよー」 「・・・そうか」 一旦、子ゆっくりをこねくり回すのをやめた玉男は成体れいむから手を離す。 それに気付いた成体れいむは「ゆっくりにげるよ!」と頑張って跳ねようとするが、微動だにしない。 というか、完全な球体になったせいで、地に足が着いていなかった。 「どほぢでにげでないのおおおおおおおお!?」 「・・・面白い苛めだな」 そう呟きながら、玉男の脇を通り抜け、部屋の奥へと歩いてゆくあねきィィ! その先には「参加確認ゆ!」とかかれた張り紙と、動けないように足を焼かれた子ゆっくりが置かれていた。 適当な紙を取り出し、そこに日付を記入し、備品の爪楊枝にセロハンテープでくっつける。 そしてそれを、額に「あねき」とラクガキされた子ゆっくりの頭に突き刺す。 「ゆびゃああああああああああ!?」 「出席かんりょー♪」 「ちーすっ!」 作業を終え、今日の参加者が今部屋にいる面子以外にも2人おり、 その面子がゆっくりレイパー、Y・Y(無論あだ名)であることを確認しているとまた一人部屋に入ってきた。 その人物は背の高い男性で、仲間内ではバスケと呼ばれている。 彼も、あねきィィ!と同じようにコートを脱ぎ、麻雀中の連中や玉男と二言三言会話した後、参加確認を済ませる。 それから、玉男と一緒に彼のお手製のボールを引っ掴んで、バスケをやりに外へと出て行った。 「あいつら元気だなぁ・・・」 「・・・大貫さん、アンタが最強だよ・・・」 「むく~ん・・・」 ようやく麻雀が終了したらしい。 勝敗は訊くまでもないのであえて気にせず、あねきィィ!は部室備え付けの“ゆーくぼっくす”の電源を入れる。 ゆーくぼっくすとは、リモコンのスイッチを入れることで眠っているゆっくりに備え付けられた装置から電流を流すものだ。 そして、その電流を喰らったゆっくりは、すぐさま歌いだす。そういう風に躾けられたゆっくりなのだ。 もちろん、サークルメンバーのお手製である。 「ムクさん、ゆ虐はいいから飲み物かってきてくれんか?ワシは緑茶で」 「紀乃はコーラ~」 「俺はコーヒーな」 「私はカフェオレで」 「あねきィィ!さんは参加してないでしょう?」 「まあまあ、いいじゃん。どうせついでなんだし」 「むっくりりかいしたよ・・・」 そんなやり取りの後、お金を受け取ったムクさんはしぶしぶと言った様子で飲み物を買いに行った。 彼が出て行くのを見届けたあねきィィ!はゆっくり保管ロッカーの1ブロックを開け、そこから成体まりさを取り出した。 彼女を早くも第2ラウンドを始めようとしている3人の輪の中に放り込む。 「まだ気分が乗らないから、そいつを代役に立てとくよ」 「りょーかい~」 「負けたら赤ゆ虐待だから・・・・・・」 呟きながら、さっきまりさを引っ張り出したロッカーの中を見る。 そこでは4匹の赤ちゃんゆっくり、れいむとまりさが2匹ずつ、が無邪気に笑いあっていた。 今、母親がわが子の命を懸けた、勝ち目の無い戦いに挑んでいるとも知らずに。 「負けたら、そいつがこの子らアレするのか?」 つづくかどうかは分かりません byゆっくりボールマン